神戸GMP施設は、ポートアイランドに新設された神戸大学統合研究拠点アネックス棟の1階に開設された。延べ床面積は2338m2。製造能力は、製薬会社のバイオ医薬品製造工場の約50分の1に相当し、抗体医薬品の原薬を製造する。調整を経て来年1月頃から製造を開始する計画だ。
バイオ医薬品は、動物細胞を活用して製造する。製造プロセスの上流から順に、[1]生産量の多い生産細胞を構築する[2]生産細胞を大量培養する[3]生産細胞から抗体を分離・精製する[4]品質評価――の各技術が必要になる。同組合発足以降、各組合員は4グループで各技術の開発を進めてきた。
今後は、開発した要素技術を製造プロセスとして統合し、全体の最適化を図るために、神戸GMP施設で実用化を試行する。バイオ医薬品製造分野の人材は不足しており、その人材育成拠点としても活用する。
同組合のプロジェクトリーダーを務める大政健史氏(大阪大学大学院工学研究科生命先端工学専攻教授)は、薬事日報社の取材に応じ、製造プロセス全体の最適化を実現することによって「これまでは場当たり的に行われてきた、バイオ医薬品の製造プロセスを確立するまでの期間が短くなる」と期待を語った。
バイオ医薬品の製造は複雑で、分離・精製時の品質は前段階の影響を受けるなど、各段階が相互に影響している。製造プロセス全体の最適化が必要だが、その研究は十分ではなかった。
そのため、バイオ医薬品の製造プロセスの構築は場当たり的に行われ、論理的なデザインになっていないのが現状。「国内企業はそれぞれバイオ医薬品の製造に活用できる技術を開発しているが、全体の技術開発は1社だけではできない。各技術を連結し、一体化して研究することがポイントになる。実験室ではなく、大きなスケールでの検証が必要」と大政氏は話す。
その検証の場として神戸GMP施設を活用する。日本は海外に比べ、バイオ医薬品の研究開発や製造で後れを取っている。国内の産官学が一体となって技術を結集し、製造プロセス全体を最適な形で「プラットフォーム化」する。人材育成も推進し、全体を底上げしたい考えだ。
17年度までに製造プロセス全体の最適化を実現する計画。それによって「試行錯誤し、苦労しながら製造プロセスを構築しなくてすみ、製造プロセス確立までの期間が短くなる」。高品質で効率的な製造の実現だけにとどまらず、バイオ医薬品の開発が早くなるメリットがあるという。
構築したプラットフォームや技術は、製薬会社や製造受託会社の工場に転用する。既に「出来上がってから活用するのではなく、走りながら活用してもらう。製薬会社など賛助会員の意見を得て、開発を進める仕組みになっている。その過程で開発した技術を試供している」と大政氏は話す。
同組合の事業期間は13~17年度まで。経済産業省からの補助金で主に運営されており、15年度の予算規模は22.4億円。