小児用医薬品が不足している日本では、有効性・安全性が確立されていないにもかかわらず、日常的に適応外使用を行わざるを得ないことが大きな問題とされてきた。小児適応がなく、用法・用量に関するエビデンスも存在せず、投与する剤形も存在しない。こうした厳しい環境の中で子供への薬物療法が行われてきたが、一方で未承認薬等検討会議の検討を受け、小児適応の取得については大きな進展を見た。
ただ、製薬企業の採算性の問題から、未だに子供に適した散剤等の小児用剤形の開発は進んでおらず、日本の子供に合わない海外製品を輸入したり、試薬から調製した院内製剤で対応しているのが現状。製薬企業側もデータの取得方法や剤形選択が分からないため、開発に二の足を踏んでいた。こうした状況を打開するため、成育医療研究センターは、新たに小児用製剤ラボを設置。小児用剤形の開発に道筋をつけていく取り組みに乗り出した。
製剤ラボは、製剤室と試験室で構成され、小児が医薬品を服用した時の薬物動態研究や小児用剤形の試作等、試験研究から医薬品製造までを行っていく。実際に研究で必要となるデータを全て揃え、製薬企業に提供することにより、小児用剤形の開発を活性化させていきたい考えだ。
石川洋一薬剤部長は、「製薬企業に赤字覚悟で剤形開発を求めるだけでは難しい。製剤ラボでの研究を通じて、われわれもデータを提供しながら一緒に開発していきたい」と狙いを話す。以前から薬剤部では、小児用剤形がないため、日常的に錠剤を粉砕したり、試薬から院内製剤を調製してきた経験がある。そうした経験やデータも小児用剤形の開発に役立てていく。
実際の検討に当たっては、厚生労働科学研究で報告された剤形変更が多く行われている上位10品目、小児用剤形の開発が望まれる新薬をターゲットに、研究をスタートさせる予定。同時に、小児の年齢に応じてどのような剤形や味が好ましいかについて、実際に薬効のないプラセボを用いて剤形を試作し、研究を進めていきたい考え。
石川氏は「子供が何歳でどういう大きさの剤形を服用できるか、どういう味を気に入るかという明確なデータはない。それも製剤ラボで調べられるので、ぜひ試験を行っていきたい」と話している。
実際に小児用剤形が求められている医薬品のうち、多くは特許切れした後発品のため、製剤技術に強い後発品メーカーの参入に期待がかかっている。石川氏は「成育医療研究センターに蓄積されている粉砕データ等を提供し、どんな剤形が妥当かといったデータも示しながら、製薬企業で剤形を開発してもらえるようアピールしていきたい」と意気込みを語っている。