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登場から1年、SGLT2阻害薬の現状課題と今後の展望は

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2015年07月01日 AM10:00

先入観を排除して、有用性を科学的に検証すべき

新規作用機序の糖尿病治療薬として登場したSGLT2阻害薬。画期的治療薬としての期待も大きかったが、日本糖尿病学会が「SGLT2阻害薬の適正使用に関するRecommendation」を公表したこともあり、あまり処方が進んでいないのが現状だ。発売後1年が経過したSGLT2阻害薬の現状について、サノフィ株式会社がメディアセミナーを開催。川崎医科大学内科学特任教授の加来浩平先生が「発売後1年を振り返ってみえる現状課題と今後の展望」と題した講演を行った。


川崎医科大学内科学 特任教授 加来浩平先生

血糖低下作用に加えて、肥満改善、血管病リスク因子の改善など、既存治療薬にはない大きなアドバンテージを有するSGLT2阻害薬。日本が創薬の段階から世界をリードし、現在、5成分6製剤が上市されているが、加来先生は「安全性への不安からか、使用頻度が予想よりも低く、未だ有用性評価ができるレベルに至っていません」とその現状を語った。

処方が伸び悩む要因の1つである安全性への懸念について、加来先生は「臨床試験の結果では特に問題点は認められていません」と語り、国内における市販後調査のデータを提示、FDAによるコメントも併せて紹介しながら解説した。

そのうえで、今、これから検討すべき臨床課題として「実臨床における有効性と安全性プロファイルの検証」、「ハイリスク患者の臨床像の確立」、「適正使用による重篤な副作用の回避」、「薬剤の有効例、無効例の特徴」、「長期の有効性、安全性の検証」の5点を挙げた。「あらゆる先入観を排除して、実臨床における有用性を科学的に検証することが重要です」(加来先生)

高齢者糖尿病においても安全性への懸念は示されなかった

続いて、高齢2型糖尿病患者に対する安全性について、SGLT2阻害薬を投与された65歳以上(うち、75歳以上の割合は33%)の2型糖尿病患者1,251例について、3か月観察した特定使用成績調査の結果を紹介した。

調査によると、脱水や低血糖、尿路・性器感染症、皮膚症状に関しては、臨床試験時の頻度を超えるものはなく、ケトアシドーシスやサルコペニアなどの報告も無かった。また、1例の死亡例があったものの、がんによるもので因果関係は否定されていた。

加来先生は「高齢者糖尿病においても特に問題となる安全性への懸念は示されませんでした。SGLT2阻害薬は治療早期から効果が目に見えやすい薬剤で、適正使用をすれば、糖尿病治療薬のなかで最も患者の思いを満たしてくれる薬かもしれません。糖尿病診療医は、エビデンスの構築と患者の日常生活の質の向上にも配慮した薬剤選択を行うべき」と語った。

▼関連リンク
QLifePro 厚労省 SGLT2阻害剤の「使用上の注意」の改訂を指示
QLifePro 日本糖尿病学会「SGLT2阻害薬の適正使用に関するRecommendation」の改訂版を公表
サノフィ株式会社

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