冠動脈塞栓症の原因、心房細動が最多
国立循環器病研究センター(国循)は6月29日、心筋梗塞の原因のひとつである冠動脈塞栓症の原因として心房細動が最多であり、動脈硬化が原因の通常の心筋梗塞よりも明らかに予後が悪いことを解明した。この研究は、同センターの野口暉夫冠疾患科部長ら心臓血管内科グループによるもの。研究の成果は、専門誌「Circulation」に6月26日付けで掲載されている。
急性心筋梗塞の多くは冠動脈血管壁のプラーク(動脈硬化巣)とよばれる塊が破れて血栓を形成し、血管が塞がれることで起こる。一方、冠動脈塞栓症は冠動脈以外の心臓内部で生じた血栓が冠動脈内に入り込み血流を止めてしまうことで起こる心筋梗塞である。冠動脈塞栓症は心筋梗塞の重要な原因とされるが、通常の心筋梗塞と区別が難しい上に、明確な診断基準が存在しないことから、これまで詳細な病態は不明のままであったという。
脳梗塞のみならず、心臓へのリスクも高まる心房細動
研究グループは、2001年1月から2013年12月までの間に国循へ入院した新規発症の急性心筋梗塞患者1,776例を後ろ向きに分析し、冠動脈塞栓症の頻度や特徴、さらに心事故の発生率について評価した。その結果、冠動脈塞栓症は全心筋梗塞の約3%であること、それらの患者の73%に心房細動の症状がみられることが明らかになったという。
さらに、心房細動を有する冠動脈塞栓症を起こした患者では、血栓症予防目的の抗凝固薬(ワーファリン)が十分に投与されていない事が判明したという。また、冠動脈塞栓症患者の心事故発生率は通常の心筋梗塞患者と比べて9倍以上に及ぶことを、世界で初めて報告している。
同研究の結果から、心房細動による塞栓症は、脳ばかりではなく心臓(冠動脈)にも生じ、かつ再発率も高いことが明らかになった。同研究グループは、心房細動患者に対して十分な抗凝固療法が重要であるとし、今後もその効果を多施設研究にて検証していく予定だとしている。
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・国立循環器病研究センター プレスリリース