慢性特発性蕁麻疹患者のQOLを改善
スイスのノバルティス社は6月12日、同社の「ゾレア(R)」(一般名:オマリズマブ)に関して、慢性特発性蕁麻疹患者の生活の質改善を示した主要第3相臨床試験の新たな解析結果を発表した。同解析結果は、カナダ・バンクーバーで開催された第23回世界皮膚科学会(WCD :World Congress of Dermatology)でも発表されている。
慢性特発性蕁麻疹は、持続性のそう痒、腫脹および発疹などの症状を呈する苦痛を伴う重度の皮膚疾患。その症状は「明らかな誘因無く皮膚に発現し、6週間以上にわたって繰り返し症状が現れる蕁麻疹」と定義されている。
主要な第3臨床相試験であるASTERIA I試験、ASTERIA II試験およびGLACIAL試験では、ヒスタミンH1受容体拮抗薬による治療にもかかわらず症状が持続する約1,000人の慢性特発性蕁麻疹患者を対象として、同剤の有効性と安全性を評価。その結果、同剤は前治療が奏効しなかった患者における慢性特発性蕁麻疹症状の軽減または解消のいずれかに極めて効果的であることが明らかになったという。
慢性特発性蕁麻疹患者のQOLを78%改善
WCDで発表された新たな事後解析では、同剤による12週間の治療を受けた患者がQOLの有意な改善を経験し、皮膚疾患のQOL評価を用いた評価では78%(プラセボ44%)、慢性蕁麻疹のQOL質問票を用いた評価では最大69%(プラセボ40%)の改善があったという。
さらに、ASSURE-CSU研究では、慢性特発性蕁麻疹が無治療で放置されると患者のQOLに恒常的な悪影響があることが判明。同様に、SOLVE-BOI研究でも、慢性特発性蕁麻疹患者は慢性特発性蕁麻疹でない人々に比べて、不安、抑うつ、睡眠困難、身体および精神状態の低下などを訴える率が高いことが明らかとなった。
慢性特発性蕁麻疹患者は、医療提供者の受診頻度の他に救急医療の利用や入院を必要とする頻度が2~3倍高く、欠勤率や全体的な業務能力低下を経験する率も2倍高くなっていることもわかったという。
ゾレアは、免疫グロブリンE(IgE)と結合する標的療法薬。IgE減少と細胞活性化機序の下流に作用してヒスタミン誘発性の皮膚反応を抑制する。慢性特発性蕁麻疹における同剤の作用機序解明のための研究は現在進行中であり、疾患発症への理解が深まる可能性がある。
米国、カナダとEUの他に10か国を超える国々において慢性特発性蕁麻疹の治療薬として、それぞれ承認されており、日本では、慢性特発性蕁麻疹の効能追加のために第3相臨床試験を実施中だ。
▼外部リンク
・ノバルティス ファーマ株式会社 プレスリリース