厚労省による計算方法の問題点を改善
東北大学は6月24日、同大学院経済学研究科 高齢経済社会研究センターの吉田浩教授らが、厚生労働省が公表した2014年の合計特殊出生率について、同省による計算方法の問題点を改善し、全国の値と比較できる都道府県別の合計特殊出生率の再計算を行ったと発表した。これまでにも吉田教授らは、全国の値と都道府県の値で計算方法が異なるため、両者は単純に比較できないことを指摘してきていた。
画像はリリースより
合計特殊出生率は、15歳から49歳までの年齢別出生率(母の年齢別の出生数をその年齢の 女性人口で割った値)を合計することによって計算される。ここで、厚労省が「人口動態統計」で公表した全国値の合計特殊出生率の計算方法をみると、分子の出生数、分母の女性人口とも、外国人を含まない日本人のみのデータを用いて計算されており、分子と分母の整合性が取れている。
これに対し、都道府県別の合計特殊出生率は、分子の出生数は日本人のみのデータであるにもかかわらず、分母の女性人口については資料の制約から外国人を含む総人口のデータを用いており、分子と分母の整合性が取れていなかった。
日本の人口政策策定指標の改善に寄与
このような計算方法の違いにより、2014年の都道府県別の合計特殊出生率は、全国の値よりも分母に外国人人口が含まれる分だけ小さめに計算されており、両者は単純に比較できない。そこで、高齢経済社会研究センターでは、全国値と比較可能な2014年の都道府県別の合計特殊出生率を再計算したという。
それによると、厚労省の計算では全国の値1.42以下とされていた13都道府県のうち、青森県、岐阜県、兵庫県の3県の合計特殊出生率は、実際は全国の値を上回っていたことが判明。この結果、都道府県ごとの順位も大きく入れ替わり、厚生労働省の公表値では第3位となっていた島根県は第2位、12位となっていた福井県は第9位、第35位となっていた岐阜県は11位も上昇して実際は第24位という結果になったという。
同研究センターのこれまでの指摘は、2015年の第189回国会でも取り上げられ、政府は今後、今回の研究成果にならった算出方法に修正する旨を答弁。この研究が日本の人口政策策定指標の改善に寄与したと同センターは報告している。
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・東北大学 プレスリリース