厚労省は、大手ドラッグストアなどで相次ぎ薬歴未記載問題が発覚したことから全国の薬局で実態把握の必要があると判断。日薬など3団体に対し、傘下の薬局で薬歴を適切に記載しているか自主点検を行うよう協力を要請し、3月中旬をメドに報告を求めていた。
自主点検は、昨年1月から12月まで1年間に算定された処方箋を対象に行われ、3団体の傘下にある1220軒の薬局で薬歴の未記載が判明した。未記載の薬局数は、日薬が983軒(2・05%)、NPhAが225軒(2・45%)、JACDSが323軒(7・09%)だった。これら1220軒の薬局で昨年1年間に算定された「薬剤服用歴管理指導料」の件数は2052万9703件。そのうち81万2144件で薬歴が未記載だった。未記載の件数を団体別で見ると、日薬で54万3156件(3・28%)、NPhAで5万4454件(1・39%)、JACDSでは43万0115件(7・34%)となった。
■「不正に厳正対処を」‐中医協委員から指摘相次ぐ
点検結果が報告された中医協総会では、約81万件の薬歴未記載に対し、薬剤師代表の安部好弘委員(日本薬剤師会常務理事)が、「極めて遺憾。信頼を損なう事例であり、深くお詫びしたい」と陳謝。「ルールを守れない人には保険調剤から退場してもらいたい」と強調した上で、「今回の結果は、業務上のケアレスミスと組織的な不正が混在したもの。多数の未記載事例について、適切な個別指導の実施をお願いしたい」と要請した。
白川修二委員(健康保険組合連合会副会長)は「今回の不正が日本の保険制度に与える影響は大きい」として、調剤報酬の返還を要求。「組織的な不正には徹底的な監査を行い、悪質な場合には保険指定の取り消しではなく、刑事告訴も含めてやってもらいたい」と厳しい対応を求めた。
花井圭子委員(日本労働組合総連合会総合政策局長)も「医療保険財政が厳しい中、被保険者も負担増を強いられている時に不正があってはならない」と厳正な対処を要求。石山惠司委員(日本経済団体連合会社会保障委員会医療・介護改革部会部会長代理)は、「JACDSの未記載割合が7%というのは、かなり異常だ。次期改定の議論に向け、期間を区切ってきちんと監査に入ってもらいたい」と求めた。
一方、中川俊男委員(日本医師会副会長)は、「(薬歴未記載の)実態を正確に把握できないまま、安易に調剤報酬の返還を求めて決着すべきでない」との考えを示した。
厚労省は、療担規則に違反する薬歴未記載のあった1220の薬局に対し、地方厚生局を通じて調剤報酬の返還を求めていく考え。悪質な事例に対しては、さらに厳正な対処を検討するとしている。