疑義照会を不要にしたのは、▽成分同一の銘柄変更▽類似剤形間での変更▽内服薬の処方規格変更▽半割、粉砕、混合調剤▽一包化調剤▽残薬調整で処方日数短縮▽湿布や軟膏の規格変更――の7項目。このうち「湿布や軟膏の規格変更」や「成分同一の銘柄変更」のうち後発品への変更調剤は、事後の情報提供も不要とし、それ以外については事後の情報提供を求めている。
「院外処方箋疑義照会プロトコール」の対象は、同会に所属する全72保険薬局。非会員は対象になっていない。京都大学病院が2013年10月から開始した、院外処方箋調剤時の疑義照会を不要とするPBPMを参考に、同院と同会が協議してプロトコールを作成した。
同院は、新型インフルエンザ流行時に備え、ひたちなか市などと協同で地域連携医療体制の構築を進めている。その一環として、地域の情報連携システム「ひたちなか健康ITネットワーク」を立ち上げ、まず薬局との連携を開始した。参加薬局は同ネットワークを通じて、同院の電子カルテに記録された内服薬や注射薬の処方内容、検体検査結果、細菌検査結果などを閲覧できる。
疑義照会を一部不要とする運用を開始したのは、形式的な疑義照会を効率化した上で、これらの情報を薬局薬剤師が閲覧して、積極的な薬学的介入を実施する時間を確保できるようにするためだ。
同院薬局長・データ管理センター長の関利一氏は「患者にとって本当に必要な疑義照会と、形式的な疑義照会を、地域の薬局薬剤師が区分なく処理していることに疑問を感じていた。検査値などを見て薬剤の効果や副作用をチェックすることによって、本来のかかりつけ薬局の役割が果たせる」と話す。
同ネットワークには、同会非加盟薬局も含めて今年4月末時点で47薬局が参加している。同院近隣の薬局は全て参加し、同市内の薬局でも参加率は80%を超えている。情報共有化に同意した患者数は1300人を超え、活用が広がってきた。
実際に検査値に基づく疑義照会が増えてきた。同院の院外処方箋を応需したある薬局薬剤師は、クレアチンキナーゼが高値になっていることに気づき、横紋筋融解症の副作用を疑って同院に疑義照会を行った。ラミシールは中止され、副作用の発現を未然に回避できたという。
関氏は「これまで検査値を見ることができなかった地域の薬局薬剤師が、当院とひたちなか市薬との勉強会を通じて、検査値に基づく病棟薬剤師の処方介入事例を学んでいる。薬局薬剤師が患者情報にアクセスする件数は右肩上がりで増えており、その薬学的介入は良い方向に変化しているのではないか」と語る。
今後も同会との協議を続けてこのプロトコールを改良する計画。また将来は、同ネットワークを介して開示する情報を拡大し、入院中の薬剤師の指導内容や疼痛情報、退院サマリーなども薬局薬剤師に開示することによって、地域連携をさらに推進したい考えだ。