限局性皮質形成異常症を引き起こすMTOR遺伝子
横浜市立大学は6月18日、同学術院医学群の中島光子助教、才津浩智准教授、松本直通教授(遺伝学教室)らが、薬が効かない難治性てんかんの原因のひとつである限局性皮質形成異常症(Focal cortical dysplasia: FCD)を引き起こす遺伝子・MTORを発見したと発表した。
画像はリリースより
FCDは、脳形成・発達段階の障害により、大脳皮質の層構造の乱れや異常神経細胞等が見られる疾患で、薬が効かない難治性てんかんの原因となっている。患者の大多数は家族の中に発病者がいないため、遺伝的なものであるかは明らかでなく、その発症は病気にかかった脳の部分の細胞に遺伝子の変異が起こるためではないかと疑われていた。
MTOR遺伝子に体細胞モザイク変異を発見
そこで研究グループは、MRI画像で脳の一部に構造の異常をきたした病変部位を認めるFCD患者の中で「FCDIIb型」という組織像を示す症例に注目。この症例の脳組織(病変部位)と血液組織(正常部位)から採取したDNAを用いて全エクソーム解析を行い、両者の遺伝子配列を比較することで異常な脳組織のみにみられる遺伝子変異を探索した。
その結果、6例のFCDIIb症例においてMTOR遺伝子に、脳組織だけに発生している、体細胞モザイク変異を発見。FCDの発症に、病気にかかった脳の部分に限定的に発生するMTOR遺伝子の変異が関わっていることが明らかになったという。
この研究成果により、FCDという病気の理解が深まるとともに、新規治療法の開発にも期待が持てるとしている。なお、この成果は米科学雑誌「Annals of Neurology」オンライン版に 5月27日付で掲載されている。
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・横浜市立大学 プレスリリース