脊髄小脳失調症6型の進行に神経炎症が関与していることを解明
東京医科歯科大学は6月16日、同大学脳統合機能研究センターの渡瀬准教授と相川特任助教の研究グループが、脊髄小脳失調症6型(SCA6)の病態の進行に、脳内の免疫を担うミクログリアの活性化が関与していることをつきとめたと発表した。
画像はリリースより
脊髄小脳失調症は、アルツハイマー病、パーキンソン病に次いで患者数が多い神経変性疾患で、有効な治療法は確立されていない。中でもSCA6は、日本で最も患者数の多い優性遺伝性の脊髄小脳失調症の1つで、治療法の開発が強く望まれている。
研究グループは、プルキンエ細胞と呼ばれる小脳の神経細胞がSCA6で変性に陥る機構を解明するため、SCA6モデルマウスの小脳の遺伝子発現状況をマイクロアレイ法という方法を用いて網羅的に解析。その結果、SCA6モデルマウスでは、プルキンエ細胞変性が確認できるより前に、脳内の免疫系を担うミクログリア細胞が活性化していることが明らかになったという。
神経変性疾患の治療法の確立開発に期待
今回の研究成果で、SCA6の初期病態において、Toll様受容体(TLR)シグナルの機能を阻害することで、この病気の初期の病態を軽減できる可能性を示した。近年、TLRは自己免疫疾患などの治療ターゲットとしても注目されており、その機能を抑制する小分子化合物の開発が製薬企業等によりすすめられている。
今後それらの化合物をSCA6モデルマウスへの投与する検証実験を通して、有効な治療法への開発、さらにはSCA1など他の脊髄小脳失調症モデルやSCA6病態の中期以降におけるミクログリアの役割が詳細の解明に期待が寄せられる。
同研究は、文部科学省科学研究費補助金ならびに科学技術振興機構(JST)戦略的創造研究推進事業(CREST)の支援のもとで行われたもの。同研究成果は、国際科学誌「Human Molecular Genetics」に、6月1日付けでオンライン速報版が先行公開され、18日付で完全版がオンライン発表された。
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・東京医科歯科大学 プレスリリース