横井氏らは、院外処方箋応需薬局における調剤医療費のデータベースとして厚生労働省が公開している、調剤MEDIASデータを活用。2013年のデータをもとに、院外処方における1日あたりの全薬剤費(内服薬、頓服薬、外用薬、注射薬、自己注射に用いる注射針などの医療材料)を都道府県ごとに算出した。その上で、各都道府県における医薬分業率やジェネリック医薬品(GE薬)使用率との相関について、多変量解析を実施した。
1日の全薬剤費は全国平均では306・6円だが、分業率が82・8%で全国1位の秋田県では312・4円、分業率が40・7%で最下位の福井県では336・9円だった。また、全薬剤費が346・8円と最も高い京都府の分業率は48・5%、275・2円と最も安い新潟県の分業率は77・5%となっていた。このように47都道府県のデータを集めて解析したところ、医薬分業率が高いほど、院外処方における1日の全薬剤費は減少する相関関係が認められた。
GE薬使用率が高い地域ほど1日の全薬剤費は減少する相関関係も認められたが、それとは独立した因子として医薬分業率は薬剤費減と相関していた。
横井氏らは医薬分業率、GE薬使用率と、1日の全薬剤費との相関関係を重回帰式で表した。現状の医薬分業率70%、GE薬使用率50%をこの式に導入すると、院外処方における1日の全薬剤費は299円になった。一方、医薬分業率0%、GE薬使用率0%の場合には457円になった。この結果から、薬局での医薬分業やGE薬使用促進によって、現段階で34・6%の薬剤費削減効果があると推定した。
また、13年度の調剤医療費における薬剤費は5兆2444億円。医薬分業率0%、GE薬使用率0%であれば約8兆円にまで膨らんでいたところ、薬局での医薬分業やGE薬使用促進によって、2兆7501億円を削減できたと推定した。13年度の薬局薬剤師の技術料は1兆7371億円に達したが、それを上回る薬剤費削減効果があったと考えられるという。
横井氏は「薬剤費の削減に関して、医薬分業の進展が一定の経済効果をもたらすことが確認できた」と言及。相関の要因分析は今回の研究の範囲外だが、「医薬分業の進展によって院外処方箋は地域に分散する。マンツーマン分業の傾向が薄まることによって薬局薬剤師は、医師に気兼ねなく疑義照会を行えるようになる。その結果、薬剤費は減少するのではないか」と推論を語る。
一方、薬剤の種類別に解析した結果では、外用薬の費用と医薬分業には相関関係が認められなかった。OTC医薬品を購入するより安く済むため患者は、外用消炎鎮痛剤を保険の範囲内で入手したがる傾向がある。横井氏は「医療者に対する患者からの圧力が強いため、薬剤師の疑義照会の効果が表れにくいのではないか。医療現場での実感がデータにも反映された」と推測している。
図:47都道府県の医薬分業率(%)、院外処方における1日あたりの全薬剤費(円)をそれぞれ横軸と縦軸に表したグラフ。医薬分業が進んでいる地域ほど薬剤費は減少している(横井氏提供)