治験を実施中の遺伝性筋疾患であるDMDに対する治療に
国立精神・神経医療研究センター(NCNP)は6月11日、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)に対する核酸医薬品開発に変化をもたらす研究結果を発表した。この研究は、NCNP神経研究所遺伝子疾患治療研究部の青木吉嗣室長らと、オックスフォード大学のカリム・エザット博士およびマシュー・ウッド教授らとの共同研究によるもの。研究成果は「Nano Letters」オンライン版に6月4日付で掲載されている。
画像はリリースより
DMDは、全世界の出生男児3,500人に1人の割合で発症する重篤な遺伝性筋疾患。同疾患はこれまでステロイド剤以外の治療法がほとんどなかったが、現在はモルフォリノ核酸を用いた「エクソン・スキップ治療」の開発が有望視されている。遺伝子疾患治療研究部では、国産初のアンチセンス核酸医薬品の開発を目指して、モルフォリノ核酸のエクソン・スキップの誘導効果と安全性を、同疾患のマウスおよび犬モデルを用いて実証してきた。
細胞膜透過性に優れた画期的な核酸医薬品の開発へ
研究グループは、両親媒性 (amphiphilic) の新世代ペプチド付加モルフォリノ核酸(PPMO)がミセル化粒子を形成することにより、マクロファージ・スカベンジャー受容体を介して筋細胞に取り込まれることを解明した。この研究結果は、細胞膜透過性に優れた核酸医薬品を設計する際に、アンチセンス核酸の自発的なミセル化ナノ粒子形成能を考慮する(パーティクル・ラッピングモデル)ことが大変重要であることを強く示唆している。また、マクロファージ・スカベンジャー受容体を標的にした新しいアンチセンス核酸のデリバリー法の開発にも応用可能だという。さらにこの成果は、同センターで治験を実施中の、DMDを対象にしたエクソン53スキップの治療効果向上にも応用できる可能性があるという。
同研究は、両親媒性アンチセンス核酸の設計法に画期的な変化をもたらすものであり、将来的に核酸医薬品の開発につながり、DMDを対象にした治療法開発が加速することが期待されている。さらに、DMD以外の筋疾患を対象にした核酸医薬品を用いた治療法開発の基盤研究に大いに寄与すると期待が寄せられている。
▼外部リンク
・国立精神・神経医療研究センター プレスリリース