■厚労省懇談会が提言
厚生労働省の「保健医療2035」策定懇談会は9日に提言書をまとめ、塩崎恭久厚労相に手渡した。団塊ジュニア世代が65歳に差しかかる20年後の社会に対応するため、質の改善や患者の価値中心の保健医療へパラダイムシフトが必要と指摘。保険料や税金1円当たりの効果を高め、35年までに“より良い医療をより安く”という価値観へ転換する行動計画を示した。
提言書では、少子高齢化の急速な進展、疾病構造の大幅な変化、技術革新を含めた医療ニーズの変化等に対し、「現在の医療制度や提供体制が十分に対応しているとは言い難い」と問題意識を示し、これまでの保健医療制度は、診療報酬改定による価格面からのコントロールに偏っており、制度疲労を起こしていると指摘。35年に向け、保健医療のあり方を質の改善、患者の価値中心、当事者による規律、ケア中心へと根本的にパラダイムを転換すべきと提言した。
その上で、20年後の保健医療が達成すべきビジョンとして、保健医療サービスから得られる価値の最大化を図ることを打ち出した。具体的には先進的・高額な医療が良いとしたり、検査や薬剤処方も量を投入すればするほど良いとするのではなく、国民の保険料や税金1円当たりの効果、価値を高め、35年までに「より良い医療をより安く」という価値観へ転換するとした。
また、地域主体の保健医療に再編する方向性を示した。その中で、診療報酬のあり方に言及。地域ごとの目標量を設定し、不足している場合の加算、過剰な場合の減算を行うなど、点数を変動させる仕組みの導入を検討するとした。将来的には、加算の算定要件の強化など、診療報酬の一部を都道府県が主体的に決定することも提言した。
主体的選択もビジョンに打ち出し、個人の選択に応じた負担のあり方を検討するとし、例えば後発品でなく先発品を使用した場合の追加負担が考えられるとした。また、自ら健康管理するための行動を支援することも提示。制度的な位置づけを含め、OTC薬を活用したセルフメディケーションの支援を行うほか、従来の門前薬局から抜本的に機能を見直し、薬局再編の姿を示す患者のための薬局ビジョンの具体化を推進するとした。