再発又は難治性の多発性骨髄腫患者の免疫系を直接的に活性化
米国のブリストル・マイヤーズ スクイブ社とアッヴィは6月2日、非盲検無作為化第3相臨床試験であるELOQUENT-2試験の中間解析結果を公表。開発段階にあるエロツズマブを多発性骨髄腫の標準治療に追加することで、病勢進行リスクが大幅に低下したことを発表した。同結果は「New England Journal of Medicine」オンライン版に6月2日付けで掲載されている。
エロツズマブはsignaling lymphocyte activation molecule family 7(SLAMF7)を標的とする免疫賦活抗体。SLAMF7は、骨髄細胞やナチュラルキラー(NK)細胞の表面に多くかつ均一に発現している糖タンパク質であり、正常組織や造血幹細胞では検出されない。エロツズマブは、骨髄腫細胞を選択的に標的とするかを見極めるべく臨床試験が実施されている。同剤は、二重の作用機序で働くとされている。NK細胞上のSLAMF7と結合してNK細胞を直接的に活性化させ、また、骨髄腫細胞上のSLAMF7と結合し、NK細胞による骨髄腫細胞の認識と破壊のために合図を送ると考えられている。
なお同剤は2014年5月、米国食品医薬品局(FDA)から、1つ以上の前治療を受けた患者に対する多発性骨髄腫の治療に使われる化学療法薬の一つ(レナリドミドとデキサメタゾンの併用)との併用で、ブレークスルーセラピー(画期的治療薬)に指定されている。
標準治療に追加で、病勢進行リスクが大幅に低下
症例数646名の今回の試験では、再発又は難治性の多発性骨髄腫治療において、研究段階にあるエロツズマブとレナリドミドおよびデキサメタゾンとの3剤併用(ELd)と、レナリドミドとデキサメタゾンのみの2剤併用(Ld)を比較。試験の主要評価項目である、無増悪生存期間(PFS)と奏効率(ORR)において優越性が示され、同試験の目的は達成されたという。
ELd群では、病勢進行または死亡リスクが、Ld群に比べて30%低下。1年PFS率は、ELd群68%に対してLd群では57%であり、2年PFS率は、ELd群41%に対してLd群では27%だった。また、ELd群では、Ld群に比べて有意なORRの改善が認められたという。安全性プロファイルは、これまでに報告されている試験結果と一致しており、エロツズマブをレナリドミドとデキサメタゾンに追加しても、有害事象の増加はごく僅かにとどまったとしている。
なお、エロツズマブとボルテゾミブおよびデキサメタゾンとの併用療法を評価した第2相臨床試験でも、同様に病勢進行または死亡リスクが28%低下。両試験の結果は、米国臨床腫瘍学会(ASCO)の2015年度年次総会で発表されている。
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・ブリストル・マイヤーズ株式会社 ニュースリリース