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皮膚バリア形成の分子機構、反応経路を解明-北大

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2015年06月11日 PM12:30

アシルセラミドの産生に関わる遺伝子を同定

北海道大学は6月9日、皮膚バリアに最も重要な脂質アシルセラミドの産生に関わる遺伝子「CYP4F22」を同定し、アシルセラミド産生の反応経路を解明したと発表した。この成果は、同大大学院薬学研究院の木原章雄教授らの研究グループによるもの。なお同内容は「Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America」 (米国科学アカデミー紀要)に6月8日付けで掲載されている。


画像はリリースより

皮膚バリアは感染防御、体内からの水分損失の防止など、陸上生物に必須の役割を持ち、その異常はアトピー性皮膚炎や魚鱗癬などの皮膚疾患を引き起こす。皮膚バリアの本体はセラミド、コレステロール、脂肪酸からなる脂質で、その中でも表皮に特異的に存在しているセラミド分子種「」が最も重要だ。しかし、アシルセラミド産生の分子機構は未だ不明であり、このことが皮膚のバリア形成の分子メカニズムの解明が進まない原因となっていた。

皮膚バリア増強という新たな治療戦略にも期待

アシルセラミドは、3つの構成成分(長鎖塩基、オメガ水酸化超長鎖脂肪酸、リノール酸)からなるが、研究グループは、そのアシルセラミドが産生される分子機構に注目。長鎖塩基と超長鎖脂肪酸が結合した超長鎖セラミドを産生する培養細胞系を確立し、この細胞を用いてオメガ水酸化酵素活性の評価を行った。脂質の検出は、質量分析または放射性同位体標識体の薄層クロマトグラフィーによる分離により実施。CYP4F22遺伝子に変異を持つ魚鱗癬患者由来の角質層を採取し、アシルセラミド組成を質量分析で測定したという。

その結果、シトクロームP450ファミリーメンバーであるCYP4F22を超長鎖セラミド産生細胞に発現させると、アシルセラミドの前駆体であるオメガ水酸化超長鎖セラミドが産生された。そして、CYP4F22遺伝子に変異を持つ魚鱗癬患者の角質層では、アシルセラミドが顕著に低下。また、CYP4F22の基質は超長鎖脂肪酸だった。これらのことから、CYP4F22がアシルセラミド産生過程で働く脂肪酸オメガ水酸化酵素であることが明らかになったという。

また、それらの成果から、長鎖アシルCoAが超長鎖アシルCoA へ伸びた後、超長鎖脂肪酸となり、CYP4F22によってオメガ水酸化超長鎖脂肪酸となる。そしてオメガ水酸化超長鎖アシル CoA、オメガ水酸化超長鎖セラミドを経て、アシルセラミドが産生される、というアシルセラミド産生の反応経路が示唆された。

今回の成果を基に皮膚バリアを増強する方策が見つかれば、アトピー性皮膚炎や魚鱗癬などの新規治療薬の開発につながると期待されている。

▼外部リンク
北海道大学 プレスリリース

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