核や小胞体も分解の対象に、オートファジーの目印を特定
東京工業大学は6月4日、モデル生物「出芽酵母」を用いて、細胞内の大規模分解システム「オートファジー」(自食作用)が、核や小胞体も分解の対象とすることを発見したと発表した。さらに核と小胞体に結合して目印となる2つのタンパク質を特定し、それらを分解するメカニズムを解明したという。
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この研究は、同大大学院生命理工学研究科の中戸川仁准教授と持田啓佑大学院生らの研究グループによるもの。研究成果は、英科学誌「ネイチャー」のオンライン版に6月3日付けで公開されている。なお同研究は、科学技術振興機構(JST)と、文部科学省科学研究費補助金のサポートを受けて得られた。
オートファジーは、生命活動の維持に必要な細胞内の大規模な分解システム。タンパク質や核酸などの生体高分子から細胞小器官まで、さまざまな細胞内成分をオートファゴソームと呼ばれる脂質膜の袋で包み込み、種々の分解酵素を含むリソソームや液胞といった分解専門の細胞小器官に運び入れて分解する。
近年、パーキンソン病などの神経変性疾患の原因ともなり得る機能不全となったミトコンドリアなど、いくつかの細胞小器官がオートファジーで選択的に分解されることが明らかとなっていた。しかしながら、細胞小器官の恒常性維持や機能制御にオートファジーがどの程度広く関与しているのかについては不明だった。
感覚神経障害の原因遺伝子と関連も示唆
オートファジーで選択的に分解されるためには、分解の対象上に「目印タンパク質」が必要となる。研究グループは、細胞の核と小胞体それぞれの分解の目印となるタンパク質を特定し、そのメカニズムを解明した。
さらに、小胞体分解の目印タンパク質は感覚神経障害の原因遺伝子と関連していることも示されたという。細胞内の核の分解は、栄養飢餓時の細胞の生存に重要であり、胞体の分解の目印タンパク質は、痛覚の喪失を特徴とする疾患である遺伝性感覚自律神経性ニューロパチーII型の原因遺伝子から作られるタンパク質に相当することが示唆された。
今回の成果は、オートファジーによる核および小胞体の分解の生理的意義、疾患との関連、分子メカニズムの解明のための足掛かりになると期待される。
▼外部リンク
・東京工業大学/科学技術振興機構 共同発表