「プラクティス・ラグをさらに拡大させる日本文化の保守的体質」と指摘
両団体合計で約1,250社が加盟する在日米国商工会議所(ACCJ)と、欧州ビジネス協会(EBC)は、医療政策白書の2015年版を共同で発表。都内でプレスセミナーを開催した。2015年の同白書のテーマは「健康寿命の延長による日本経済活性化」。41の領域において、190を超える政策提言を行っている。
製薬ならびに医療機器メーカーの経営陣も出席
同白書では、これまでの日本の医療政策は、発症後または病状が深刻になってからの疾病治療に焦点を当てており、医療費の増大につながりかねない、と懸念を示し、日本の医療システムを予防志向型のパラダイムにシフトすべきと提言している。セミナーで講演したMSDのトニー・アルバレズ社長は、健康増進による生産年齢人口の確保が、将来にわたる経済競争力維持の喫緊課題であるとし、「糖尿病、COPD、慢性腎疾患、AF患者の脳卒中予防、うつ病の5つのベストインクラスの治療薬により、1兆円以上の経済効果が得られる」と語った。
また、同白書では、厚生労働省やPMDAの継続的な取り組みにより、「ドラッグ・ラグ」や「ディバイス・ラグ」「ダイアグノッスティック・ラグ」が解消されたと評価する一方、革新的新薬・医療機器の導入から、医療現場での採用や幅広い活用までの時間差を指す「プラクティス・ラグ」が解消されていないとしている。同白書でも序章で「日本文化の保守的体質と相まって、革新的医療(医薬品、医療機器、診断)の導入から、一般的な普及までの時間は、多くの場合、ほかの先進諸国よりも長くなっている」と厳しく指摘している。
労働生産性の向上を通じた医療コストの抑制を見据えて
今回の白書の発表について、とりまとめの中心である、ACCJヘルスケア委員会のウィリアム・ビショップ委員長は「日本には、医療政策を改善する多くの手段がありますが、本白書では欧米のグローバルヘルスケア企業の経験と専門知識にもとづく、さまざまな政策の具体例を提示しており、より肯定的な影響をもたらすでしょう」とコメント。
ACCJのジェイ・ポナゼッキ会頭も「健康管理は、日本国民がより長く、健康的で生産性の高い人生を送るための戦略的な投資です。今回の政策提言は、労働生産性の向上を通じて日本の経済競争力を強化しつつ、健康への支出を高め、医療コストの増大を抑える可能性があります」と語った。セミナーに訪れたメディアからの、国を挙げて医療費抑制に動くなか、新規領域への投資は難しいのでは?という質問に対して、予防医療の推進こそが、長期的な医療費抑制につながることをアピールした。
▼外部リンク
・ACCJ-EBC医療政策白書2015年版