筋萎縮性側索硬化症の新たな治療選択肢へ
エーザイ株式会社は5月27日、メコバラミン(開発コード: E0302)の高用量製剤について、日本において筋萎縮性側索硬化症(Amyotrophic Lateral Sclerosis: ALS)に関する新薬承認申請を行ったことを発表した。
ALSは、重篤な筋肉の萎縮と筋力低下をきたす神経変性疾患で、進行性の難病。確立された根治療法はなく、国内で承認されているALSの治療剤は進行を抑制する薬剤1剤のみであり、新たな治療選択肢が強く必要とされていた。
メコバラミンは、「メチコバール(R)注射液 500μg」として末梢性神経障害およびビタミンB12欠乏による巨赤芽球性貧血の適応で承認・販売されている。メコバラミンのALSに対する作用機序については解明されていなかったが、非臨床研究の結果から、神経保護作用、神経軸索再生作用により有効性を示す可能性が示唆されていた。また、1990年代からALSに対する高用量メコバラミンの臨床研究が実施され、その有効性を示唆する結果が得られていたという。これらを受け、同社では2004年より高用量メコバラミンの臨床試験を開始していた。
発症後12か月以内の治療開始でALSFRS-Rスコアの低下を抑制
この試験は、二重盲検によるプラセボ対照試験。イベント(人工呼吸器使用または死亡)が発生するまでの期間および日本語版改訂ALS機能評価スケール(ALSFRS-R)の変化量を主要評価項目として実施した。
その結果、メコバラミン投与群(25mgおよび50mg投与群)では、プラセボ投与群に比較してイベント発生までの期間の延長傾向とALSFRS-Rスコアの低下抑制傾向がみられたが、統計学的有意差は確認できなかったという。一方で追加解析の結果、ALS 発症後12か月以内に治療を開始した患者において、高用量メコバラミンによるイベント発生までの期間延長とALSFRS-Rスコアの低下抑制が認められた。また、血清脂質が低値の患者においても同様の結果が確認された。なお、投与群間で副作用発現率に違いはなかったという。
この試験の結果は、4月18日から25日まで米国ワシントン D.C.で開催された第67回米国神経学会(American Academy of Neurology:AAN)年次総会および5月20日から23日まで新潟市で開催された第56回日本神経学会学術大会において発表されている。
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・エーザイ株式会社 プレスリリース