古くて新しい人獣共通感染症のワイル病
東北大学は5月25日、同大学災害科学国際研究所災害医学研究部門・災害感染症学分野の研究グループが、宮城県で1970年代以前によく見られ、一旦は収まっていた感染症「レプトスピローシス」(ワイル病)が、近年、東北地方で再発生していたことを発見した。
レプトスピローシスは、日本にも古くから存在する人獣共通感染症。重症型はワイル病として知られ、急性腎不全、肝不全、脳症などを起こし、死に至ることもある。感染原は感染したラットなどの動物由来の尿で、それがヒトに経皮的に感染すると考えられている。世界では年間30~50万人の患者が存在し、温暖化による洪水などで増加。WHOによれば、レプトスピローシスは代表的な災害感染症で、2009年にはマニラの洪水のあとに大流行が起こった。
将来、東北地方で再流行する可能性も懸念
レプトスピローシスは、宮城県でも1970年以前にはよく見られた疾患だった。1959年には大流行があり、宮城県だけで800名以上の患者が発生した。しかしその後、農業の機械化や衛生面の改善により、患者数は急激に減少。近年における東北地方でのレプロスピローシスの発生は、2008年に秋田県で1例の報告があるだけだったが、2012~2014年の間には、4例の感染者報告があったという。
今回の東北地方における発病と災害とは、直接の因果関係はない。ただ今回、ネズミに噛まれたことから発症した例があったという。災害時、被災者は自然界に近い生活を強いられ、洪水、動物などの接触が増える。東北地方に住む人々は、災害時、このような疾患が起こりうるとの知識を持っておくことが大切だ。また、医療関係者も、発熱疾患を診た際は、この疾患の可能性を考えることが大事だとしている。
今回の発見から、将来東北地方でレプトスピローシスが再流行する可能性も懸念される。今後、津波を含む災害が発生した際、急性腎障害・熱性疾患が見られた場合は、レプトスピローシスの可能性も考慮して病原体を注意深く検査する必要があると研究グループは述べている。
▼外部リンク
・東北大学 プレスリリース