GHIT Fundの累計投資額は約43億円に
グローバルヘルス技術振興基金(GHIT Fund)は5月22日、住血吸虫症を検出するための診断薬開発と内臓リーシュマニア症に対する治療薬の開発に、約11億円の新たな投資を決定したことを発表した。この新規投資により、GHIT Fundの累計投資額は約43億円となった。
1つ目の案件である住血吸虫症は、寄生虫が潜む汚染水を介して経皮的に感染する感染症。世界的に78か国で発生例が報告されており、1億人の児童を含む2億3千万人以上の人々が罹患していると推測される。これは寄生虫疾患の影響としてはマラリアにつぐものだ。現在の住血吸虫症の診断法では、感度の低い糞便検査(寄生虫卵検査)が用いられるが、今回の、組換えタンパクを用いた血清検査(寄生虫抗体検査)診断薬の開発により、遠隔地での利用と早期治療が可能になると考えられる。
出資先の住血吸虫症検出コンソーシアムには、日本から帯広畜産大学・原虫病研究センターおよび東京大学大学院・農学生命科学研究科、フィリピンからはフィリピン大学マニラ校・公衆衛生学部、米国からはシアトルを拠点とするInBiosインターナショナルが参画。なお、住血吸虫症治療薬に関するもう1つの案件として、住血吸虫症の標準治療薬であるプラジカンテルの小児用製剤開発の継続にあたり、4億9千万円の追加投資も決定している。
スクリーニングプログラムには新たに4社の参画が決定
もう1つの案件は、ジュネーブを拠点とする Drugs for Neglected Diseases initiative (DNDi)と大阪を拠点とする武田薬品工業株式会社とのパートナーシップに対し、新たな内臓リーシュマニア症治療薬を開発するために出資するというもの。
リーシュマニア症は、サシチョウバエが媒介する寄生虫により伝染する感染症。その中でも特に重症の型である内臓リーシュマニア症は、毎年、新たに約30万件の発症例が報告されている。治療せずに放置した場合、ほぼ確実に死に至り、HIV/AIDSと重複感染した場合、HIV/AIDSの発症が早められ、さらに深刻になる。今回の治療薬はアミノピラゾール系化合物を基礎とし、動物モデルにて概念実証が示された新規化合物群の誘導体最適化を行っていくという。
また、マラリア、結核向けの新薬開発を目指すスクリーニングプログラムには、新たに、第一三共RDノバーレ株式会社、大日本住友製薬株式会社、田辺三菱製薬株式会社、そして沖縄のオーピーバイオファクトリー株式会社の参画が決定。各社が保有する化合物ライブラリーのスクリーニング事業が開始することも、併せて発表されている。
▼外部リンク
・グローバルヘルス技術振興基金 プレスリリース