若年でのCAD発症リスクが高くなるFH
サノフィ株式会社は4月27日に、家族性高コレステロール血症(FH)に関するメディアセミナーを実施。帝京大学臨床研究センター センター長の寺本民生先生が講演を行った。FHにはLDL受容体が完全欠損しているホモ型と半分が欠損しているヘテロ型の2種類があり、このうちホモ型はスタチンがその効果を発揮しない。国内の患者数はホモ型は、120~700人程度、ヘテロ型は30~70万人程度いると推測されている。「FHは頻度の高い遺伝性疾患で、かかりつけ医がみている可能性が高いのですが、その診断率は非常に低いものとなっています」(寺本先生)
帝京大学臨床研究センター
センター長 寺本民生先生
実際、国内で外来にて3か月以上脂質低下薬を投与されている18歳以上の患者24,893例を対象に行った調査では、FHと診断されたのは845例、わずか3.4%にとどまっている。FHは若年での心筋梗塞や狭心症などといったCAD発症リスクが高くなる傾向があることが、日本人一般コホートでのCAD年間発症率を調べた調査(いわゆる久山町研究)で分かっている。
「FHにおける目標LDLコレステロール値は100mg/dlもしくは治療前の50%未満であることが望ましい」と寺本先生は語った。
大きな期待が寄せられるPCSK9阻害薬
そうしたなかで、寺本先生は現在、開発中のPCSK9阻害薬に大きな期待を寄せている。PCSK9は、LDL受容体に結合し分解に寄与する蛋白で、2003年に発見された。PCSK9機能喪失型の遺伝子変異例では、一般人に比べてLDL-C値が低く、心血管系疾患を発症しにくいことが分かっている。また、PCSK9はスタチン投与により活性が強化されることから、スタチンを増量しても十分な脂質低下作用が得られない要因と考えられている。現在、PCSK9を標的にした開発中の薬剤でフェーズ3の段階にあるのは、alirocumabとevolocumabがある。このうち、alirocumabは日本人の高コレステロール血症患者を対象とした第3相試験において、有効性の主要評価項目を達成している。
「ハイリスク患者のLDL-Cコレステロール目標達成率は約68%にとどまっています。また、治療を受けていない患者さんも多くいらっしゃいます。こうした患者さんの中にFHが隠れている可能性は十分あると考えます。FHは早期診断・早期治療で心血管リスクを非FHの患者さんと同程度にまで下げられるので、患者さんだけでなく、医療者側にもより一層の啓発が重要だと考えています」(寺本先生)
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・サノフィ株式会社 プレスリリース