■アステラスが好調
製薬大手4社の2014年度決算が15日に出揃った。アステラス製薬は増収大幅増益と好調だったが、最大手の武田薬品がアクトスの関連訴訟で和解金と関連費用の支払いで3241億円を計上し、上場以来初の赤字に転落。第一三共は、スイスのロシュから導入した抗癌剤「ゼルボラフ」の営業権の減損損失が響き、二桁の営業減益となったほか、エーザイは主力のアルツハイマー病治療剤「アリセプト」と胃潰瘍治療剤「パリエット」が不振で、約6割の営業減益と厳しい決算となった。
武田薬品は、実質ベースで前期比2・8%増の1兆7778億円と増収を確保した。高血圧症治療剤「カンデサルタン」やプロトンポンプ阻害剤「ランソプラゾール」などの大型製品が後発品影響を受けたが、グローバルで新製品がカバーした。昨年度上市した抗うつ薬「ブリンテリックス」と潰瘍性大腸炎治療剤「エンティビオ」など4製品で約1000億円近くを稼いだ。
日本は薬価改定の影響を受け、2・9%の減収となったが、米国が21%増の4261億円、アジアが30%増の売上1000億円を突破し、海外売上比率が前期の61・9%から65・2%と一気に上昇した。
アステラス製薬は、9・4%増の1兆2473億円と二桁に迫る成長で、国内勢では唯一の好決算となった。グローバル製品の抗癌剤「エクスタンディ」が売上1000億円を突破し、抗癌剤領域で2000億円に乗せた。過活動膀胱(OAB)治療剤「ベシケア」「ミラベグロン(一般名)」も堅調に推移した。
国内が6%減で着地したものの、海外の全地域で二桁増収を達成し、海外売上比率が60%に上昇した。
第一三共は、3月にジェネリック薬子会社ランバクシーを連結から除外し、継続事業だけで見ると2・3%増の9193億円となった。グローバル製品では、主力の高血圧症治療剤「オルメサルタン」が北米での高血圧症治療市場が激化した影響で、2・2%減の1935億円と減収となったが、抗血小板薬「エフィエント」が二桁の伸びを示し、大型化を期待する抗凝固薬「エドキサバン」がほぼ計画通りの43億円で滑り出した。
国内事業を担う日本事業は、薬価改定の影響を受け、1%減となったが、米国子会社ルイトポルドが貧血治療剤「ヴェノファー」「インジェクタファー」の大幅売上増による貢献で、44%増とカバーした。
エーザイは、アリセプトが海外で伸びるも国内で売上減、パリエットも特許切れ影響を払拭できておらず、9%減の5485億円。癌領域もハラヴェンが二桁成長となったが、ダコジェンの権利譲渡で2%の減収となった。国内は10%、北米は25%の減収と厳しい結果となった。
利益面では、各社で大きな差が見られた。武田は、アクトスの関連訴訟の和解に伴う支払いで3241億円を計上し、1000億円台の営業損失、純損失となった。第一三共は、ゼルボラフの減損損失350億円を売上原価に計上し、二桁営業減益となったものの、純利益はランバクシーの売却で3000億円台の最終利益となった。エーザイは原価率が悪化し、約6割の営業減益。アステラスは営業利益が約6割増、純利益が約5割増と大幅増益を達成した。
16年3月期は、武田が1%台前半の増収、利益面も2000億円台の黒字転換を見込む。アステラスが増収増益、エーザイが微増収大幅増益、第一三共が売上が横ばい、大幅増益を予想する。
表:国内製薬大手4社の2015年3月期決算(単位:百万円、▲はマイナス)