ロコモ度テストの結果と、要介護の予測因子の相関を検証
日本整形外科学会は5月15日、ロコモティブシンドローム(ロコモ)の段階を判定するための臨床判断値を新たに策定したと発表。同日、都内で行われた記者発表会で同学会理事長の岩本幸英氏が講演した。
日本整形外科学会理事長 九州大学整形外科教授
岩本幸英氏
和名で運動器症候群と呼ばれるロコモは、骨・関節・筋肉・神経など運動器の障害により、移動機能の低下をきたした状態を指す。進行すると要介護リスクが高くなるといわれており、予備軍も含めると国内に4700万人にロコモの可能性があるとされる。これまで、ロコモの進行度を測るため、自身の移動機能を年代平均値と比べる「ロコモ度テスト」が行われていた。今回発表された臨床判断値は、このロコモ度テストと、要介護となる予測因子を組み合わせて策定されたものだ。
2013年から開始したロコモ度テストでは、要介護サービスを受けることをエンドポイントとした縦断的研究結果はまだ行われていない。そこで、すでにある地域住民コホート縦断研究結果で判明していた「椅子立ち上がり時間が長くかかる」と「通常歩行速度(m/秒)が遅い」という、65歳以上の一般地域住民が平均4年後に要介護サービスを受給するようになる予測因子と、ロコモ度テストの地域住民コホートデータの相関を検証。その結果、ロコモ度テストで測定されたそれぞれの値は独立した因子として優位に関連していることが判明。またより、ロコモ度が高い方が、予測因子との関連性が強いことが明らかになったとしている。
岩本理事長「予防医学的見地からロコモを判断する」
今回、発表された臨床判断値(ロコモ度)は以下の2段階に分けられる。
立ち上がりテスト | どちらか一側でも片足で40cmの高さから立てない |
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2ステップテスト | 1.3未満(膝を曲げて身体を鎮めながらの大股歩行が困難) |
ロコモ25 | 7点以上 |
立ち上がりテスト | 両足で20cmの高さから立てない |
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2ステップテスト | 1.1未満(足で蹴りだしながらの大股歩行が困難) |
ロコモ25 | 16点以上 |
※ロコモ度テストの詳細はロコモ チャレンジ!推進協議会ホームページに詳しい
https://locomo-joa.jp/
ロコモ度1は、移動機能の低下が始まっている状態。加齢に伴って筋力やバランスが落ちてきている可能性がある。運動習慣をつけ、バランスの取れた食事を摂るよう促している。ロコモ度2は、移動機能の低下が進行し、自立した生活ができなくなるリスクが高くなっている状態。また、痛みを伴う場合は、何らかの運動器疾患がある可能性があるため、整形外科専門医の受診を勧めるとしている。
岩本理事長は「運動器への意識を高め、運動器障害を予防・改善することで日常生活が制限される人を減少させることが必要。平成34年までにロコモの認知率を80%にするという、国が目標と定める目標を達成するためにも、予防医学的見地からロコモを判断する必要がある」と語った。
▼外部リンク
・日本整形外科学会 プレスリリース