IL-1αにより誘導される巨核球破裂型造血過程を明らかに
自治医科大学および京都大学iPS細胞研究所(CiRA)の研究グループは5月11日、骨髄中の巨核球細胞に生体顕微鏡観察を行い、新しい血小板造血の過程を同定し、それを制御する因子(インターロイキン1アルファ:IL-1α)を明らかにしたと発表した。
画像はリリースより
この研究は自治医科大学分子病態研究部の西村智教授と、CiRAの江藤浩之教授らによるもの。研究成果は、「Journal of Cell Biology」オンライン版に、5月11日付けで掲載されている。
従来から知られている血小板造血機構は、細胞質が細長く伸張した血小板前駆細胞(Proplatelet)という形態をとり、一つひとつちぎれて血小板を産生するというモデルが提唱されていた。しかし、このモデルでは炎症や感染の時などに見られる急激な血小板数の増加のメカニズムを説明することができなかったという。
生体内の血小板造血を観察するバイオイメージング技術を開発
今回、研究グループは、生きたマウス体内において高い解像度で骨髄細胞を観察する生体顕微鏡技術である「バイオイメージング技術」を開発。その観察結果として、巨核球が破裂するように一度に大量に血小板を産生する新しい造血メカニズムを見いだした(破裂型造血:Rupture)。
研究成果によると、生体は、血小板造血として2つのモード(ProplateletとRupture)を使いわけており、通常の状態ではProplateletにより血小板を維持しているが、急激に大量の血小板の必要性が発生するとRuptureが支配的になり、血小板を効率的に作ることを明らかにした。さらには、破裂型の血小板造血を誘導する因子としてIL-1αを同定したという。
今回の発見・同定により、1950年代より議論が続く造血そのものの細胞生物学的過程が明らかになった。また、骨髄バイオイメージングの手法が大きく進歩したこととなる。今後、輸血に必要な血小板をiPS細胞から大量に製造する際にも、今回新たな生理作用が認められたIL-1αが重要な役割を持つ可能性があるとして期待が寄せられている。
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・科学技術振興機構 共同発表