特定の神経細胞にクリプトクロムが存在すると時差ぼけが早く回復
岡山大学は5月11日、キイロショウジョウバエを用いて、時差ぼけ回復に関与する脳神経細胞を探索し、約14個の神経細胞が時差ぼけの回復に重要であることを世界で初めて明らかにしたと発表した。この研究は、同大学大学院自然科学研究科(理)時間生物学研究室の吉井大志准教授と、独ヴュルツブルク大学の国際共同研究グループによるもの。同研究成果は、4月15日に米国の科学雑誌「Journal of Neuroscience」に掲載されている。
画像はリリースより
概日時計は、別の光条件に置かれると、新しい光条件に同調して時計の時刻合わせを行う。しかし、時刻合わせはすぐに終わらないため、数日間時差ぼけの症状が現れる。一方、モデル生物であるキイロショウジョウバエでは、約1日で新しい光条件に同調することができ、時差ぼけからの回復が非常に早いことが知られていた。今までに、クリプトクロムと呼ばれるタンパク質が概日時計の光同調に関与していることが明らかになっているが、そのメカニズムはほとんど分かっていない。
時差ぼけ抑制法の開発につながると期待
研究グループは、脳の特定の細胞だけがクリプトクロムを持つハエを多数作成。時差ぼけ回復に関わる神経細胞を探索した。その結果、ハエ系統の中で、5th s-LNvとLNdとよばれる概日時計を構成する神経細胞の一群でクリプトクロムが存在すると、時差ぼけの期間が有意に短くなり、約1日で新しい光環境に同調できることが分かったという。
キイロショウジョウバエの脳にある約150個の神経細胞が、概日時計を構成する「時計細胞」と考えられている。5th s-LNv細胞とLNd細胞は合わせて約14個の時計細胞群だ。従って、5th s-LNv細胞とLNd細胞の約14個の時計細胞は、光同調に特化した役割を持つ時計細胞であり、それらが全時計細胞の中で支配的な役割を持っていると考えられる。この独裁的な階層性により、脳内に分布する多くの時計細胞がすばやく新しい光環境に同調することができるとしている。
キイロショウジョウバエの概日時計のメカニズムは、ヒトの概日時計と非常に良く似ていることが分かっていることから、今回の研究成果がヒトに応用されることで、時差ぼけ抑制法の開発につながる可能性があると研究グループは述べている。
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・岡山大学 プレスリリース