東日本大震災後の七ヶ浜健康増進プロジェクトによる研究結果
東北大学は5月8日、身体に疾患を持って治療をしている人は、心理的苦痛も高くなっていることを明らかにしたと発表した。この研究は、同大学の東北メディカル・メガバンク機構予防医学・疫学部門の中谷直樹准教授が、同部門の中村智洋助教及び土屋菜歩助教、辻一郎部門長、寳澤篤教授、災害科学国際研究所災害精神医学分野の富田博秋教授と共同で行ったもの。
同大学では東日本大震災以降、七ヶ浜町との共同事業として行う「七ヶ浜健康増進プロジェクト」という健康づくりへのさまざまな取り組みを実施。2011年5月以来、仮設住宅での茶話会と健康相談を重ねると共に、被災者対象の健康調査も行っている。今回の研究は、この七ヶ浜健康増進プロジェクトを通して行ったという。
心理的苦痛は、東日本大震災の被害の程度に関わらず確認
これまでの研究で、身体に疾患を持つ者は高い心理的苦痛を有することが報告されている。そこで今回の研究では、東日本大震災で甚大な被害を受けた沿岸地域において、循環器疾患、がん、高脂血症、肝臓病、 腎臓病、糖尿病などの疾患の治療の有無と心理的苦痛の関連を検討。解析対象は、宮城県七ヶ浜町に居住する40歳以上の住民で、調査は2012年10月から12月に、研究チームが対象地域を訪問し、自己記入式の調査票を配布及び回収することで行われ、3,032人を解析対象とした。
その結果、心筋梗塞・狭心症治療者及び肝臓病治療者は、治療していない者に比べ、高い心理的苦痛を有する(K6スコア2が13点以上)者が有意に多いことが認められた。また、がん、高脂血症、腎臓病、糖尿病の治療をしている者は、治療していない者に比べ、高い心理的苦痛を有する者が多い傾向が示された。この関連は、東日本大震災の被害の程度(大規模半壊以上、半壊以下)に関わらず認められたという。
この研究から、被災地において、身体疾患の治療を受けている者に対して、厚く心理的サポートをする必要性が示されたと研究グループは述べている。なお、同研究結果は、災害医学公衆衛生学雑誌「Disaster Medicine and Public Health Preparedness」(電子版)に5月1日付けで掲載されている。
▼外部リンク
・東北大学 プレスリリース