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細胞同士が助け合って神経細胞の変性を防ぐ仕組みを解明-NCNP

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2015年05月01日 PM01:00

認知症や運動障害を引き起こす異常なたんぱく質の凝集体蓄積

国立精神・神経医療研究センター()は4月28日、同センター神経研究所疾病研究第四部の永井義隆室長、武内敏秀研究員(現京都大学)らの研究グループが、細胞同士が分子シャペロンと呼ばれる防御因子をやり取りすることで、神経変性疾患における異常たんぱく質の凝集を防ぐという、生体内の新しい仕組みを明らかにしたと発表した。この成果はJST戦略的創造研究推進事業において得られたもので、「米国科学アカデミー紀要(PNAS)」のオンライン速報版で公開されている。


画像はリリースより

アルツハイマー病、、ポリグルタミン病などの神経変性疾患は、異常なたんぱく質の凝集体が神経細胞に蓄積することで、認知症や運動障害が引き起こされる。このようなたんぱく質の凝集に対して、生体内には分子シャペロンと呼ばれる防御因子が働き、凝集を防ぐことが知られていたが、分子シャペロンはそれぞれの細胞内で個別に働くと考えられていた。

エクソソームによって、分子シャペロンが細胞間を伝播

今回、研究グループは、ある1つの細胞にある分子シャペロンの周辺細胞への働きを検討。その結果、分子シャペロンがエクソソームという小胞に包まれて細胞から分泌され、他の周辺細胞へ取り込まれ、たんぱく質の凝集を抑えることを発見した。さらに、この仕組みにより筋肉、脂肪などの末梢細胞からの分子シャペロンが神経細胞の変性を防ぐことを、ポリグルタミン病のショウジョウバエモデルを用いて確認したという。

これは、生体がたんぱく質の凝集という緊急事態に対して、個々の細胞が独立して身を守るのではなく、細胞同士で助け合う仕組みを備えていることを示唆している。また、この仕組みでは、エクソソームという細胞外分泌小胞が大きな役割を担っていることも初めて明らかになった。

今回の研究により、たんぱく質の凝集に対する新しい生体内防御機構が明らかとなり、この仕組みに注目した病態診断バイオマーカーの開発や新しい治療法開発につながることが期待される。

▼外部リンク
国立精神・神経医療研究センター プレスリリース

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