■薬局薬剤師の服薬説明に反映
京都大学病院は今月16日から院外処方箋の様式を改訂し、薬局薬剤師の処方鑑査や服薬説明に必要な場合には、病名などのコメントを医師が任意で記載できる欄を設けた。厳格な投与量の設定が求められる場合に体重と体表面積を記載できる欄も新たに設置した。2013年10月から院外処方箋への検査値表示を開始し、全国の基幹病院や薬局薬剤師から注目を浴びた京都大学病院が、その取り組みをさらに進化させた。
院外処方箋の下段に「処方医から薬局薬剤師へのコメント・依頼」欄を新設した。薬局薬剤師に伝えたい内容を、医師が手書きで記載する。「コンプライアンスに注意してほしい」「副作用のモニタリングをしっかり行ってほしい」など、薬局薬剤師への要望を具体的に記述するほか、必要に応じて病名を記入する。
複数の適応疾患を持つ薬剤が処方された時に、薬局薬剤師は医師の処方意図を判断しづらい場合があり、本来の意図とは異なる服薬説明をしかねない場合もある。病名の記載によって薬局薬剤師は、処方意図に応じた的確な服薬説明や処方鑑査を行いやすくなる。
同欄の右横には、体重と体表面積の記載欄も設けた。厳格な投与量の設定が必要な薬剤を処方する場合にこれらの情報を記入し、薬局薬剤師の処方鑑査に役立ててもらう。
このほか、合意書を交わした薬局を対象に、事前に取り決めた事項について疑義照会を不要とする運用を13年10月から開始しているが、この欄に医師が「合意不適応」と記載することによって、その合意を適応させないことを可能にした。そのような要望や事例はこれまでにないが、医師の選択肢を増やすために仕組みを設けた。
京都大学病院が13年10月から院外処方箋への13項目の検査値表示に踏み切ったのは、薬物療法の安全性や有効性を担保するために、チーム医療の一員としての役割を薬局薬剤師に発揮してもらうためだ。京都大学教授・同院薬剤部長の松原和夫氏は「実施後、負の側面はなかった。薬局薬剤師から『よかった』と聞くし、勉強する機運が高まっている。腎機能に応じた投与量に関する疑義照会は多く、安全性は向上していると思う」と話す。
今回の改訂については「問題となる事例があったり、医師の声を受けたりして改訂に踏み切ったのではない。さらにいいものにしていきたいと考えてコメント・依頼欄を新設した。当初は記載される事例は少ないとは思うが、しばらく様子を見て、少ないようであれば医師に記載を働きかけていきたい。オーダ画面上で記載できるようにするなどの改良も今後、検討したい」と語る。
また、医師がコメントや依頼を記入した場合には、それに対する返答をトレーシングレポートに記載して同院薬剤部までFAXで送信するよう薬局薬剤師に求めており、「連携をさらに深めていきたい」と松原氏は強調する。
京都大学病院の事例をきっかけに、院外処方箋や院外処方箋用紙に検査値を表示する大学病院や基幹病院が全国各地で増えている。検査値に加え、医師による任意の手書きとはいえ病名を記載する欄を新たに設けた取り組みは、再び全国から注目を浴びそうだ。