2型糖尿病患者の6割が診断確定後1年以上経ってから眼科を受診
バイエル薬品株式会社と参天製薬株式会社は4月23日、2型糖尿病患者1,000人を対象とした、糖尿病網膜症の予防に関する実態調査の結果を発表した。監修は、東京女子医科大学 糖尿病センター眼科の北野滋彦教授が務めた。
東京女子医科大学 糖尿病センター眼科
北野滋彦教授
糖尿病腎症、糖尿病性神経障害などと並び、主要な合併症の1つである糖尿病網膜症は、失明にもつながる深刻な疾患だ。しかし、黄斑部が障害されるまで視力への影響が出にくいうえ、自覚症状が出てからの眼科受診では、治療が困難な場合もある。
今回の調査結果では、糖尿病網膜症罹患者の37.5%が網膜症診断時に「見えにくいなどの自覚症状は全くなかった」と回答。早期に気づきにくい網膜症による失明リスクを軽減するためには、糖尿病診断後の早期眼科受診と、適切な頻度で眼科を受診することが重要になる。
ガイドラインが推奨する「年1回以上の定期受診」、半数の患者が実施せず
今回の調査では、「糖尿病と診断されてから糖尿病網膜症などの目の合併症の有無を調べるために眼科を受診しましたか?」という質問で、「診断から1年以上たってから受診した」との回答がおよそ6割。うち、「受診していない」との回答も23.9%(239人)にのぼった。この239人に眼科を受診していない理由を尋ねたところ、「糖尿病治療医から眼科を受診するように言われなかったから」が48.5%と半数を占めた。
また、「最近は、どのくらいの頻度で眼科を受診していますか?」との質問に、22.3%が「現在は受診していない」と回答。一度も眼科にかかっていない患者と合わせると46.2%が1年以上眼科を受診していないことがわかった。
日本糖尿病学会の「科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン2013」では、「診断確定時に眼科を受診させ、糖尿病網膜症の有無を評価すべきである」「以降は少なくとも年1回の定期受診が望ましく、リスクの高い例ではより短い間隔での眼科受診が勧められる」とされている。この調査結果は、こうしたガイドラインが定める推奨が、実臨床の場では実施されていないことが如実に現れている。
都内で行われたセミナーで講演した北野教授は、この結果について「我々医師の責任として、糖尿病合併症に関する十分な情報提供を行わなければなりません。また医師だけでなく医療スタッフ、行政やメディアも含め、患者が眼科を受診するための行動支援が、網膜症予防や早期発見、良好な視力予後につながります」と、患者へ適切な情報提供を行うよう呼びかけた。