黄色ブドウ球菌と皮膚炎の関係を解明
慶應義塾大学は4月22日、アトピー性皮膚炎における皮膚炎が黄色ブドウ球菌などの異常細菌巣によって引き起こされることを、マウスを用いて解明したと発表した。
画像はプレスリリースより
この研究は、同大医学部皮膚科学教室と米国National Institutes of Healthの永尾圭介博士(元・慶應義塾大学医学部専任講師)との研究グループによるもの。研究成果は、米科学雑誌「Immunity」電子版に4月21日付けで発表されている。
アトピー性皮膚炎はアレルギー性の疾患であると考えられているが、原因となるアレルゲンは現在まで解明されていなかった。一方、アトピー性皮膚炎患者の皮膚では、黄色ブドウ球菌が多数存在していることが古くから知られていたが、これがどのようにアトピー性皮膚炎の病態に関わっているかは不明だった。
ステロイド剤に頼らない治療戦略の開発に期待
今回研究グループは、ADAM17という酵素をマウスの皮膚から欠損させることで、アトピー性皮膚炎のADAM17 cKOマウスを作成した。ADAM17 cKOマウスに皮膚細菌巣を培養すると、生後4週より黄色ブドウ球菌が大量に検出できることが判明。正常マウスと比較したマイクロバイオーム解析では、生後2、3週間まで同一だった皮膚細菌巣は4週目からまず Corynebacterium mastitidis(C.mastitidis)の出現に続き黄色ブドウ球菌が出現し、C.mastitidisはCorynebacterium bovis(C.bovis)に置き換わり、最終的にはC.bovisと黄色ブドウ球菌が皮膚細菌巣を支配することがわかったという。よって、皮膚炎の発症と共に皮膚細菌巣は異常細菌巣へと劇的な変貌を遂げているといえる。
この研究の結果は、アトピー性皮膚炎の理解を大きく前進させるばかりではなく、現在ステロイド剤で炎症抑制に頼っているアトピー性皮膚炎の治療法を大きく変える可能性があると考えられる。今後、細菌巣を正常化することのできる新しい治療法の開発が期待される。
▼外部リンク
・慶応義塾大学 プレスリリース