関節リウマチ発症につながると考えられるポルフィロモナス菌
京都大学は4月21日、歯周病の罹患が関節リウマチの発症に影響を与える可能性があることを示したと発表した。この研究は、同大医学部附属病院リウマチセンターの橋本求特定助教と医学部附属病院の別所和久教授を中心とする共同研究グループによるもの。
画像はリリースより
今回の発表は、2つの成果に関するもので、研究成果は、英文誌「Journal of Autoimmunity」電子版(3月26日付け)と、英文誌「PLOS ONE」電子版(4月7日付け)に、それぞれ掲載されている。
関節リウマチ患者の約8割の血液中には、抗シトルリン化蛋白抗体(抗CCP抗体)という、シトルリン化反応を経たタンパクを認識する抗体が検出されるが、この抗体はしばしば関節リウマチの発症に先立って検出されることが分かっている。また、歯周病菌の一種であるポルフィロモナス・ジンジバリス菌(ポルフィロモナス菌)が、現在知られている中で唯一、シトルリン化を起こす酵素を産生する細菌であることが報告されていた。
そのため、歯周病の罹患が、この歯周病菌の持つシトルリン化酵素による過剰なシトルリン化を介して、関節リウマチの発症に先立って検出される抗CCP抗体の産生を引き起こし、関節リウマチの発症につながっているのではないかと考えられていた。
関節リウマチを発症していない健常人でも抗CCP抗体の産生を確認
そこで研究グループは、約1万人の健常人を対象とした疫学調査「ながはまコホート」のデータを用い、参加者の内、関節リウマチおよび膠原病で「ある/ある可能性を持つ参加者」を除いて、解析を実施。その結果、健常人の約1.7%に、関節リウマチを発症していないにもかかわらず抗CCP抗体の産生が確認され、この抗体の有無や力価と歯周病の臨床評価の指数とが有意に相関することを見出した。一方、代表的な関節リウマチのマーカーであるリウマトイド因子との相関はみられなかったという。
さらに、京大病院リウマチセンターを未治療、未診断で受診した72名の関節痛患者の歯周病状態を評価。それらの患者がその後関節リウマチを発症するか、2年間の追跡調査を行った。その結果、初診時に歯周病をもつ関節痛患者は、歯周病をもたない患者に比較して、その後関節リウマチと診断され、抗リウマチ治療を開始されるリスクが約2.7倍高くなることを見出した。ポルフィロモナス菌の保菌との相関はみられず、臨床的に歯周病に罹患していることが重要と考えられるとしている。
研究グループは今後、歯周病が関節リウマチの発症に影響を及ぼすメカニズムが抗CCP抗体の誘導だけなのか、あるいはポルフィロモナス菌が特に関係しているのかなどについては、さらなる研究が必要としている。
▼外部リンク
・京都大学 研究成果