CiRA主導の研究プロジェクトに、武田が費用と設備を提供
京都大学iPS細胞研究所(CiRA:サイラ)と武田薬品工業株式会社は4月17日、心不全、糖尿病、神経疾患などにおけるiPS細胞技術の臨床応用に向けた共同研究の実施に関する契約を締結したと発表した。CiRAと武田薬品は10年間にわたり、CiRAが主導する研究プログラムを共同で実施することになるという。
「T-CiRA」(Takeda-CiRA Joint Program for iPS Cell Applications)と命名された同提携では、iPS細胞技術を用いた創薬研究や細胞治療に関する複数の研究プロジェクトが実施される予定。iPS細胞の発見者で、ノーベル賞受賞者である山中伸弥CiRA所長が研究全体を指揮し、武田薬品は長期にわたる研究費用の提供と研究の運営に対する助言を行い、藤沢市に所在する湘南研究所内の研究設備を提供するとしている。
iPS細胞技術を用いた医療応用を実現する上で大きな力に
当初の研究分野として可能性の高いものには、心不全、糖尿病、精神神経疾患、がん免疫療法などが挙げられており、共同研究の進展に伴い、新たなプロジェクトが追加される見込み。共同研究が軌道に乗った段階では、10件前後のプロジェクトが同時進行することになるという。
武田薬品は、湘南研究所内の研究設備、および10年間で200億円の提携費用を提供する。さらに、10年間で120億円以上に相当する研究支援(施設、設備、武田薬品の研究者など、さまざまな研究支援)を提供。研究人員は全体で100名程度を予定しており、武田薬品湘南研究所を拠点として、グローバルで新たに採用する人員も含み、武田薬品およびCiRAよりそれぞれ50名程度が共同研究に従事する。また、同提携においては、武田薬品の化合物ライブラリーなど特別な研究資産も用いられるという。
iPS細胞技術は、医療の未来に画期的な変革をもたらす可能性があり、その応用は創薬研究、細胞治療、薬物安全性評価など多岐にわたる。今回の提携は、莫大な時間と労力を要するiPS細胞技術の研究と臨床応用に大きく貢献するものと期待されている。
▼外部リンク
・武田薬品工業株式会社 ニュースリリース