結節性硬化症の新たな病態機構を解明
東京都医学総合研究所(医学研)は4月17日、結節性硬化症の病態メカニズムを解明したと発表した。この研究は、同研究所の杉浦弘子基盤技術研究職員、安田新客員研究員、山形要人副参事研究員らによるもので、福岡大学の桂林秀太郎准教授、順天堂大学の樋野興夫教授、小林敏之准教授らとの共同研究。研究成果は、英科学誌「Nature Communications」オンライン版に4月16日付で掲載されている。
画像はリリースより
結節性硬化症は、神経系や皮膚、腎、肺など全身に良性の腫瘍ができる難病。主な神経系の症状として、乳児期から始まる難治性てんかんや知的障害が知られており、最近では、自閉症も多く合併することがわかっていた。
結節性硬化症は、これまでにTsc蛋白質の異常で起きることが報告されている。このTscに異常が生じると、蛋白質の機能を抑えている低分子量GTP結合蛋白質の一種であるRheb(レブ)と、その下流のmTOR(免疫抑制薬ラパマイシンの標的蛋白質)が活性化され、発症する。実際、ラパマイシンは、結節性硬化症の腎臓や肺の腫瘍に対する治療薬として用いられているが、てんかんなど神経症状に対しては増悪した症例もあり、まだ有効性が確定していなかったという。
従来考えられてきた病態機構とは全く異なるメカニズム
今回、研究グループは、結節性硬化症のモデル動物から神経細胞を培養し、そのシナプスを調査。その結果として、結節性硬化症を抱える患者の脳内ではシナプスが正しく作られなくなることを見出した。さらに、この病気の鍵となる蛋白質、Rhebやsyntenin(シンテニン)の機能を抑えることによって正しいシナプスを作らせることにも成功したという。
このメカニズムは、従来考えられてきた病態機構とは全く異なっていた。今後は、Rhebあるいはsynteninの機能を抑える薬の探索や開発が、難治性てんかんや知的障害の新規治療に繋がると期待されている。
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