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薬剤性小腸傷害に「レバミピド」が有効であることを確認-大阪市立大

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2015年04月20日 PM02:00

低用量アスピリン製剤による小腸傷害に

大阪市立大学は4月16日、同大学医学研究科消化器内科学の渡邉俊雄准教授らが、大阪医科大学、京都府立医科大学、佐賀大学との共同研究により、胃潰瘍治療薬であるレバミピドが低用量アスピリン製剤(LDA)による小腸傷害に有効であることを明らかにしたと発表した。同研究成果は、米科学誌「PLOS ONE」に4月15日付で公開されている。


画像はプレスリリースより

LDAは、心筋梗塞や脳梗塞等の血栓症の予防に使用されている抗血小板薬。LDA療法における最も重要な合併症は消化管傷害であり、重症例では死の転機を取る場合もある。この消化管傷害は主に胃や十二指腸等に発症するが、最近の研究で内服者の半数以上に小腸傷害が認められることが確認されている。しかし、LDAによる小腸傷害の治療法は未だ確立されておらず、出血を伴う重症例ではLDAを中止せざるを得ない。その場合には血栓症の発症リスクが高まることが問題となっていた。

安全性が確立されている安価な薬剤

粘膜防御因子増強剤のレバミピドは、国内で広く使用されている胃炎・胃潰瘍の治療薬。これまでの基礎的、臨床的な検討により、同剤がLDA起因性小腸傷害にも有効である可能性が示唆されていた。しかし、レバミピドは消化管粘膜に直接付着して作用するために、6mにもおよぶ小腸に対して効果を発揮するためには、常用量では不十分であり、高用量を投与する必要があると考えられていた。

そこで研究グループでは、心筋梗塞や脳梗塞の予防目的でLDAを長期間服用している患者を対象にカプセル内視鏡を施行して、小腸に3個以上の粘膜欠損(ビランまたは潰瘍)を有する中等症から重症の小腸傷害患者を対象に、高用量レバミピドの有効性を評価する多施設共同ランダム化二重盲検比較試験を実施。対象患者をプラセボ群とレバミピド群(1日900mg分3)の2群に無作為に分け、薬剤を8週間投与した後にカプセル内視鏡を施行して、投与前後での粘膜欠損数の変化および粘膜欠損の完全消失率を評価した。その結果、粘膜欠損数はプラセボ群では薬剤投与前後で差はなかったが、レバミピド群では投与後に有意に減少。また、粘膜欠損の完全消失率もレバミピド群がプラセボ群より約4倍高値だったという。

レバミピドは20年以上にわたり胃炎、胃潰瘍の治療薬として広く使用されている安価な薬剤で、安全性も確立されている。今回の研究成果により、レバミピドが薬剤性小腸傷害の治療薬として、早期に臨床応用されることが期待されると、研究グループは述べている。

▼外部リンク
大阪市立大学 プレスリリース

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