東北大発の骨再生材料が実用化へ
東北大学は4月9日、同大大学院医工学研究科の鎌倉慎治教授、同歯学研究科の高橋哲教授、鈴木治教授、松井桂子助教、川井忠助教らのグループが、東北大発の骨再生誘導材「リン酸オクタカルシウム・コラーゲン複合体」(OCP/Collagen)の開発に成功したことを発表した。また、このOCP/Collagenを用いた歯科・口腔外科治療を目的として、東洋紡株式会社が治験を開始することも併せて公表されている。
画像はプレスリリースより
OCP/Collagenは、東北大学が日本ハム株式会社と骨再生を目的として共同研究で開発したリン酸オクタカルシウム(OCP:Ca8H2(PO4)6・5H2O)と医療用コラーゲン(NMPコラーゲンPS:日本ハム)からなる複合材料。同材は、優れた骨再生能を示し、細胞や成長因子の補充なしで骨再生を実現。また、OCP/Collagenから出来た骨は元の骨と同等な性質を示すという。さらに、使用法が簡便で煩雑な操作や管理体制も不要。優れた費用対効果を持っているという。これらは動物実験や臨床試験で確認し、過去10年以上にわたり学会報告や論文発表を積み重ねてきた。
世界に先駆けて東洋紡主導の治験を開始
歯科・口腔外科では多くの骨欠損を伴う疾患があり、本来骨であるべき部分が失われた状態に再び骨組織を作る骨再生が必要となる。現行の人工骨では骨再生は難しく、未だに医療現場で最も信頼できる骨再生治療法は、患者自身の健康な骨を採取して病変部を治療する自家骨移植が用いられている。
今回東洋紡は、世界に先駆けてOCP/Collagenの東北大学病院を主幹施設とした多施設共同治験を開始。具体的には、歯科口腔外科領域の骨欠損にOCP/Collagenを適用し、有効性、安全性を評価するという。なお、同治験計画全体を統括する治験調整医師は、東北大学大学院歯学研究科顎顔面・口腔外科学分野の高橋哲教授が担当する。
研究グループは、OCP/Collagenによる骨再生の実現によって、患者自身の健康な骨を採取して病変部の治療に用いる自家骨移植術を減らすことができ、患者の苦痛の軽減、入院期間の短縮等にも寄与できるとしている。また、体内の細胞の機能を利用するOCP/Collagenによる骨再生は、緊急手術における対応が期待できるとともに、整形外科領域や開頭・開胸手術に伴う骨欠損の修復への応用も期待できると述べている。
今後は、OCP/Collagen の厚生労働省への承認申請を含めた保険適用を目標とし、さらに日本発の医療技術として世界への展開を目指すとしている。
▼外部リンク
・東北大学 プレスリリース