睡眠障害と糖尿病の増悪に関連性
大阪市立大学は4月14日、糖尿病の血糖コントロール悪化で睡眠の質の劣化を伴う睡眠障害が引き起こされること、また睡眠障害が早朝高血圧を起こすことで糖尿病の心血管障害の原因となることが明らかになったと発表した。
画像はプレスリリースより
この研究は、同大学医学研究科代謝内分泌病態内科学の稲葉雅章教授らのグループによるもの。研究成果は、科学雑誌「PLOS ONE」に同日付けでオンライン掲載されている。
疫学研究では以前から睡眠障害の患者では、糖尿病の有病率が上昇することが示唆されていた。
動脈硬化進展予防や血糖コントロール改善を目的とした治療を
今回、研究グループは、63名の2型糖尿病患者に脳波計を用いて精密な睡眠の質判定を行った。その結果、血糖コントロール指標であるHbA1cの増悪につれて、深睡眠の程度を示すレム睡眠潜時が短縮することが判明したという。また、レム睡眠潜時は徐波睡眠の程度を示すデルタパワーと正相関を示し、血糖コントロール増悪により深睡眠の徐波睡眠相が減少することも明らかになった。
さらに、それらの睡眠の質の悪化は、睡眠時無呼吸とは独立して、動脈硬化の要因の1つとなる可能性があり、心血管イベントリスク因子である頸動脈の内膜中膜肥厚度と関連することも示唆された。
今回の研究によって、2型糖尿病患者での睡眠障害に対する積極的な治療は、不眠によるQOL増悪を改善するだけでなく、交感神経活動の低下により夜間・早朝血圧改善による動脈硬化進展予防や、血糖コントロール改善を目的とする治療ターゲットとして位置づけられることが分かった。睡眠導入薬の進歩や新規薬剤の投入により、不眠治療が臨床の場で安全かつ効率よく行えるようになったことに加えて、不眠治療に対する認識を変えることができる研究成果であると研究グループは述べている。
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・大阪市立大学 プレスリリース