時計遺伝子「E4BP4」の役割を解明
理化学研究所は4月13日、時計遺伝子「E4BP4」が、自然リンパ球(ILC)の発生に必須な分子の発現を調節していることを明らかにしたと発表した。これは、理研統合生命医科学研究センターサイトカイン制御チームの久保允人チームリーダー(東京理科大学生命科学研究所 分子病態学研究部門教授)と、リスボン大学分子医学研究所のエンリケ・フェルナンデス教授、パスツール研究所自然免疫ユニットのジェームス・デサント教授らの共同研究グループによる成果である。
画像はプレスリリースより
ILCは、2010年に発見された自然免疫に関わる細胞で、さまざまなタイプの炎症に関わるサイトカインを産生する能力を持つ。Tリンパ球やBリンパ球とは異なる新たなリンパ球として注目されている。
久保チームリーダーらは2011年に、時計遺伝子の制御装置として知られるE4BP4という転写因子が、過剰な免疫反応を沈静化する分子として働くことを発見。E4BP4を欠損させたマウスを詳細に解析し、自然リンパ球が作られる過程で鍵となる分子であることを明らかにしていた。
ILCを標的とした治療法の開発に期待
今回研究グループは、ILCの発生過程におけるE4BP4/NFIL-3の詳細な働きを解明。E4BP4が「Id2」と呼ばれるILCの発生初期段階に必要な分子の発現を調節する重要な働きを持ち、ILC1、ILC2、ILC3という3つのグループすべてのILCの発生に関わっていることを明らかにしたという。
この成果により今後、ILCを標的とした新しい視点からの治療法の開発が期待できると同時に、これらの細胞が関与する疾患に対して、原因や症状に対応する治療法が考案できる可能性があるとしている。なお、同研究は、英科学雑誌「Cell report」のオンライン版に3月20日付で掲載されている。
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・理化学研究所 プレスリリース