痛み指標の主観的診断から、より敏速・客観的な診断が可能に
北海道大学は4月9日、同大大学院医学研究科の若尾宏准教授らの研究グループが、血液細胞中のTリンパ球の存在割合や細胞表面上の抗原を解析することで、線維筋痛症候群を診断する方法を開発したと発表した。さらに、この手法により脊椎関節炎・関節リウマチとの鑑別が可能であることもわかったという。
線維筋痛症候群は慢性全身性疼痛を特徴とする原因不明の難病だが、その診断は主に痛みを指標に行われてきた。
この病気は、病院で通常用いられる検査項目に異常が認められないため、線維筋痛症候群を疾患として認めない医師も多くいる。このため患者は、身体的・精神的苦痛に苛まれてきた。そこで、線維筋痛症候群を敏速かつ正確に、そして脊椎関節炎・関節リウマチなど他の類似疾患と鑑別診断する方法が求められていた。
類似した症状の脊椎関節炎、関節リウマチとの鑑別診断にも有用
MAIT(マイト)細胞は、実験動物のマウスにはほとんど存在しないが、ヒトに非常に多いという特徴を有し、最近、感染・免疫の分野で注目されつつあるTリンパ球。ヒト細菌感染防御や自己免疫疾患等に深く関わっていることが示唆されている。今回研究グループは、このMAIT細胞に注目。この細胞の末梢血中での存在割合、表面上に存在する様々な抗原(タンパク質)の発現量を、健常人ならびに線維筋痛症候群、脊椎関節炎、関節リウマチの患者の検体を使用してフローサイトメーターにて解析した。
その結果、MAIT細胞上のある種の抗原発現量を解析することで、線維筋痛症候群と健常状態を区別しうること、また類似疾患である脊椎関節炎、関節リウマチと線維筋痛症候群を鑑別できることがわかったという。
今回の研究は、これまで主観的な診断基準しかなく、類似疾患との鑑別も困難であった為に疾患として医師にもなかなか認識されなかった線維筋痛症候群に対して、新たな客観的診断基準を付与すると共に早期診断を可能とし、患者のQOL向上に寄与するものと期待される。今後、MAIT細胞の機能解析を進めることにより、線維筋痛症候群の病態やその発症機構について分子生物学的理解が得られるとともに、革新的な治療法開発も視野に入ると研究グループは述べている。
▼外部リンク
・北海道大学 プレスリリース