欧米で使用されるイソトレチノインと同じビタミンA類似薬で
国立がん研究センター(NCC)は4月9日、小児のハイリスク神経芽腫を対象に、分化誘導療法薬の医師主導治験を行うことを発表した。治験はNCC中央病院小児腫瘍科において、同日付けで開始したという。
今回治験を行う分化誘導療法薬は、欧米では神経芽腫の標準治療として使用されるイソトレチノインと同じビタミンA類似薬。イソトレチノインの1/10以下の濃度で神経芽腫の細胞株に作用し分化誘導することが、NCCのエピゲノム解析分野で確認されているという。
また今回の医師主導治験は、難治性神経芽腫に対する治療後の再発抑制薬として抗GD2抗体を用いた免疫療法の医師主導治験を共に実施した実績のある大阪市立総合医療センター、九州大学病院と共同で実施する予定だ。
欧米の標準治療薬を超える分化誘導効果も期待
神経芽腫は、小児がんにおいて脳腫瘍に次いで多い固形腫瘍。患者の半数はハイリスクに分類され、5年以上の長期生存が3~4割にとどまる予後不良の難治がんとされている。抗がん剤治療や自家移植治療、放射線治療、手術が行われ、これらの治療がうまくいった場合に、イソトレチノインを6か月内服することで、3年以内の再発・死亡を15%減らすことが示されている。そのため、欧米では15年前から同剤が神経芽腫に対する標準治療として用いられているという。
しかし日本では同剤が薬として承認されていないことから、患者が個人輸入する以外の方法では使用することができず、ドラッグ・ラグの状態が長く続いていた。 これまでにも国内での同剤の開発は検討されていたものの、さまざまな理由から開発には至っておらず、国内に同剤を導入することは極めて困難と考えられていたという。
今回治験を行う薬剤は、NCCが基礎研究の段階から大きく関わったもの。神経芽腫に対してイソトレチノインよりも強い抗腫瘍効果を示すことが期待されている。
医師主導治験ではまず、小児での適切な投与量の決定を行う第1相試験を行う。薬剤はカプセル製剤だが、3歳くらいから飲めるように小さな小児用カプセルを使用しているという。
今回の治験の結果によっては、イソトレチノインのドラッグ・ラグを解消すると同時に、米国でも長らく成しえていない同剤の次世代薬開発をも達成できる可能性が期待される。
▼外部リンク
・国立がん研究センター プレスリリース