■JUMPが提言
日本ユーザビリティ医療情報化推進協議会(JUMP)は9日、製薬企業による医薬品の製造から患者への投薬・服薬までの情報を追跡し、遡及する「医療トレーサビリティ」確立に向けた提言を発表した。これまで医薬品の生産から卸までの流通過程に限られていたトレーサビリティの範囲を、投薬された患者の「服薬」にまで拡大することで、退院後の在宅介護現場まで服用を追跡し、飲み間違いや重複投与の防止につなげる。処方等データを共同利用できる「医療トレーサビリティ情報管理プラットフォーム」(仮称)の構築を進め、2018年の運用開始を目指す。
提言は、わが国で進められてきた医薬品のトレーサビリティ管理が生産から流通段階に限られ、販売後の医療機関、薬局にまでは言及されてこなかったと指摘。
追跡可能な範囲を、患者が薬を購入する時点から服用する段階にまで拡大した。退院後の在宅介護現場等での医療の効果検証が容易になり、患者の早期回復や医療費適正化につながる可能性があるとした。
トレーサビリティの範囲を患者の服用まで拡大することにより、患者が退院して在宅に戻ってからの服用までを追跡できたり、病院と在宅における服用履歴の可視化・共有、飲み忘れや飲み間違い、重複投与の防止等、病院と在宅介護現場のシームレスな医療が提供できるようになると意義を強調した。
育薬の視点も重要とし、追跡した服用データを利用することにより、新薬の発売後の患者ニーズ等を把握したり、共有して基礎研究にフィードバックし、医薬品の改良、開発につなげられるとした。
その上で、医療トレーサビリティの確立に向けた環境整備として、法制度による実質的な強制力が必要とし、医療トレーサビリティを強力に推進する「医療トレーサビリティ安全措置法(仮称)」の制定を提言。政府、行政に環境整備を求めた。
また、国内における各種識別コード、データ形式等の標準化を推進し、標準化が済んでいる場合は、臨床現場での使用・製造業による表示について法令で義務化すること等を求めた。
システム基盤については「医療トレーサビリティ情報管理プラットフォーム」(仮称)の早期構築を求め、これを積極的に利用して医薬品や医療等の安全性向上を目指すと共に、電子お薬手帳など、服用データまでを収集、管理できるプラットフォームと連携した新たなサービス創出の推進を提言した。