糖と脂質の代謝を促進し、抗糖尿病、抗メタボ作用を発揮
理化学研究所は4月9日、メタボリックシンドロームの鍵となる分子である膜タンパク質「アディポネクチン受容体」の立体構造の解明に成功したと発表した。
画像はプレスリリースより
この研究は、理研・横山構造生物学研究室の横山茂之上席研究員と、東京大学大学院医学系研究科の門脇孝教授、山内敏正准教授らの共同研究グループによるもの。研究成果は、英科学雑誌「Nature」オンライン版に現地時間の4月8日付けで掲載された。
細胞膜に存在する膜タンパク質は、細胞外からのシグナルを細胞内へと伝達する重要な役割を担い、創薬の標的として注目されている。なかでも、アディポネクチン受容体(AdipoR1、AdipoR2)は、メタボリックシンドロームの鍵を握る分子として注目されているが、試料調製の困難さから、その立体構造情報が得られていなかった。
メタボリックシンドローム・糖尿病の予防薬や治療薬の創薬に期待
今回研究グループは、従来は難しかった高純度かつ大量に膜タンパク質を調製する手法や、脂質メソフェーズ結晶化手法などを使って、アディポネクチン受容体の調製・結晶化に成功。大型放射光施設「SPring-8」のマイクロフォーカスビームを用い、結晶のX線回折データを収集して、その立体構造を高分解能で解明したという。
その結果、アディポネクチン受容体の立体構造は、現在までに知られている膜タンパク質の立体構造とは異なる、新規の立体構造をもつことが分かった。とくにAdipoR1/AdipoR2の膜貫通部位の螺旋構造は、これまで解明された膜タンパク質が持っていた特徴的な曲がりがなく、従来と異なった働き方をするタンパク質と考えられるという。このように、アディポネクチン受容体は、多数の新たな構造的特徴を有する受容体であることが明らかになった。
今回の研究は、アディポネクチン受容体の情報伝達メカニズムの解明につながるだけでなく、メタボリックシンドローム・糖尿病の予防薬や治療薬の開発に有益な情報となることが期待される。
▼外部リンク
・理化学研究所 プレスリリース