原因遺伝子(パーキン)が神経細胞を正常に保つ仕組みを明らかに
科学技術振興機構(JST)は4月8日、JST戦略的創造研究推進事業において、東京都医学総合研究所の松田憲之プロジェクトリーダーらが、PINK1(以下、ピンクワン)、Parkin(以下、パーキン)、ユビキチンという3種類の分子が協調して働くことで、パーキンソン病の発症を抑える仕組みの一端を明らかにしたと発表した。
画像はプレスリリースより
なお、この研究は、同研究所の田中啓二所長、尾勝圭研究員、徳島大学の小迫英尊教授らと共同で行ったものであり、4月6日に英国科学誌「Journal of Cell Biology」のオンライン版に発表され、近日中に正式掲載される予定。
パーキンソン病は従来、異常なミトコンドリアが神経細胞の中にたまると発症すると考えられてきた。しかし、その状況に至る理由が不明であり、異常なミトコンドリアが細胞の中にたまる原因と、その仕組みの理解が望まれていた。
遺伝性パーキンソン病発症メカニズムの解明に寄与
今回、松田プロジェクトリーダーらは、ピンクワンやパーキンという遺伝子の変異によって発症する「遺伝性パーキンソン病」を研究。ピンクワン・パーキン・ユビキチンという3つの分子が、異常なミトコンドリアを細胞の中から取り除く仕組みを明らかにしたという。
先行研究によって、遺伝性パーキンソン病の患者に由来するピンクワンはユビキチンをリン酸化できず、異常なミトコンドリア上のリン酸ユビキチン鎖も形成できないことが分かっている。今回の研究結果と合わせると、ピンクワンが異常になるとパーキンのミトコンドリアへの移行およびユビキチン鎖の形成もできず、異常なミトコンドリアが取り除かれずに神経細胞の中に蓄積し、その結果、神経細胞が死ぬことでパーキンソン病が発症している可能性が強く示唆されると結論づけている。
今回の知見が、ヒトの神経細胞内でも起きているかどうか、またこの仕組みの破綻が遺伝性だけでなく孤発性のパーキンソン病の発症に寄与しているかどうかは、さらなる研究が必要だ。しかし長期的には、同現象をもとにパーキンソン病の病理解析ツールや診断マーカーの開発につながる可能性があり、将来的には病気の発症リスクの判断材料に用いることなども期待できるとしている。
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・科学技術振興機構 プレスリリース