失明の予防方法がない強度近視
京都大学は4月7日、近視(近眼)および強度近視の発症に関わる遺伝子変異を発見したと発表した。この研究は、同大大学院医学研究科眼科学講座の山城健児講師と吉村長久同教授らによるもので、滋賀県長浜市で行われている「ながはまコホート」を用いた研究。研究成果は、米科学誌「Nature Communications」オンライン版に3月31日付けで公開されている。
画像はリリースより
近視はアジア人に多く、日本人の2~3人に1人が近視であるとされる。なかでも、5%程度の人は特にその度合いが強い、強度近視であるといわれている。強度近視は、日本人の失明原因の上位5つの疾患に常に入っており、失明予防の方法がないために大きな問題となっている。近視の原因としては、近見作業や遺伝因子などさまざまな要因が考えられているが、いまだに近視を確実に予防する方法はないとされてきた。
近視の治療薬が開発される可能性や、失明の予防にも
今回研究グループは、9,800人の日本人データを解析し、WNT7B遺伝子の変異(SNP)が近視の発症に影響を与えていることを突き止めた。さらに1,000人の日本人強度近視患者の追加データを解析したところ、WNT7B遺伝子の変異(SNP)が強度近視の発症にも影響を与えていることが判明。また、動物実験では角膜と網膜の細胞が出すWNT7Bの量が、近視発症時に変化するということも分かった。
現時点では、WNT7Bが近視を発症させるメカニズムには未解明な部分も多いが、それが解明されれば、近視の治療薬が開発される可能性がある。今回の研究は、近視の発症原因を探るための第一歩となる研究結果で、将来的にはメガネやコンタクトレンズを使わなくても良くなるだけでなく、強度近視による失明の予防につながると考えられる。
▼外部リンク
・京都大学 研究成果