■がん研究センター集計
国立がん研究センターは3日、患者からの申し出により、国内未承認薬等を混合診療として使えるようにする「患者申出療養(仮称)」の対象となる抗癌剤が1月末時点で42剤に上るとの集計結果を発表した。混合診療の対象となるのは、血液癌、悪性黒色腫(メラノーマ)、前立腺癌の治療薬が多く、これらの大半は1カ月当たり100万円以上の薬剤費が必要となり、同センターは「患者申出療養が導入されても、全額自己負担とほとんど変わらず、高額な薬剤費を負担できる一部の裕福な患者しか恩恵を受けられない可能性がある」と懸念を表明した。
同センターの先進医療評価室が「国内で薬事法上未承認・適応外となる医薬品・適応のリスト」を更新、公開したもので、1月末時点で欧米既承認・日本未承認の抗癌剤は42剤であることが分かった。
その内訳を見ると、主な抗癌剤は、悪性リンパ腫など血液領域が19剤、メラノーマなど皮膚科領域が5剤、前立腺癌など泌尿器科領域が5剤、骨軟部腫瘍が2剤、甲状腺癌が2剤、非小細胞肺癌など肺癌が2剤だった。5大癌とされる胃癌、大腸癌、乳癌、肝癌・子宮癌の未承認薬は1剤のみだった。
患者申出療養の対象となる42剤のうち24剤で1カ月当たりの薬剤費が100万円を超えた。同センターは、実際に未承認薬を用いた場合の患者自己負担額を試算したモデルケースを示した。それによると、悪性リンパ腫治療薬「アドセトリス」(一般名:ブレンツキシマブ)の初回投与時(1回当たり、入院3日間)の自己負担額は、自費診療の場合で150万7750円、患者申出療養を使った“混合診療”では143万0658円だった。一方、保険診療で高額療養費制度を使った場合は、9万4028円と混合診療の約15分の1となった。
さらに、メラノーマ治療薬「イピリムマブ」の4回投与(3カ月当たり、初回投与は入院3日想定)の自己負担額は、自費診療の場合で1367万3450円、患者申出療養を使った混合診療でも1352万7198円と1000万円を超え、自費診療と15万円しか変わらなかった。
治療開始から1カ月時点のイピリムマブの薬剤費を見ると、自費診療で351万9690円、混合診療でも341万2470円かかり、患者申出療養を使っても差額は10万7220円しかなく、保険適用となった場合の自己負担額11万4147円と、約30倍の大きな差が見られた。
同センターは「患者申出療養の制度下では、薬剤費の多くは患者負担となることが予想され、高額な薬剤費を負担できる裕福な患者しか制度の恩恵を受けられない可能性がある」と懸念を示した。