AD患者の認知機能と血中の脂質代謝物質デスモステロールが相関
新潟大学は4月3日、血液中の脂質代謝物質である「デスモステロール」がアルツハイマー型認知症(AD)の患者に生じる認知機能の経時的な変化と相関していることを見出したと発表した。
画像はニュースリリースより
この研究は、同大脳研究所遺伝子機能解析学分野の池内健教授ら研究グループと、エーザイ株式会社による共同研究によるもの。研究成果は、3月31日に米国学術誌「Alzheimer’s & Dementia: Diagnosis、 Assessment & Disease Monitoring」に掲載された。
ADの診断では現在、脳画像検査や脳脊髄液検査などによって行われているが、高価な機器が必要であることや、検査の侵襲性などが課題とされていた。そのため、場所を問わず行える血液を用いた診断の開発が求められており、両社はかねてからADの血液マーカーの開発に取り組んでいたという。
血液診断の実現により、認知症発症の予測や薬剤の効果判定にも期待
研究グループは、日本人のAD患者200人と、認知機能が正常な高齢者200人の血中デスモステロールを質量分析法により測定。その結果、AD患者においてデスモステロール/コレステロール比(DES/CHO、以下、血中デスモステロール値)が有意に低下していることが明らかになった。また、血中デスモステロール値と認知機能の指標であるMMSE(ミニメンタルステート検査)も良好な相関を示したという。
さらに、AD患者を経時的に追跡し、認知機能の変化と血中デスモステロール値の変化を観察。すると、認知機能の低下が著しい患者群では血中デスモステロール値も著しく低下し、健常高齢者や軽度認知障害者(MCI)、AD患者における経時的な認知機能の変動と血中デスモステロール値の変動も良好な相関を示したという。
今回の研究により、血中デスモステロールの測定が、ADの診断および認知機能低下の指標として有用であることが示唆された。今後、認知機能が正常もしくはMCIの時期に血液中のデスモステロールを測定することで、将来の認知症発症の予測や薬剤の効果判定など、さまざまな応用の可能性が期待される。同研究グループは、技術の実用化や測定コストの軽減化などの課題も含め、今後もアルツハイマー型認知症の血液診断の研究を続けていきたいとしている。
▼外部リンク
・エーザイ株式会社 ニュースリリース