不明だった炎症に伴う骨破壊や骨粗しょう症のメカニズム
東京大学と科学技術振興機構(JST)は3月31日、抗体(IgG)が抗原と結合してできる免疫複合体が破骨細胞を増やして骨を壊す、という自己免疫疾患に伴う骨粗しょう症のメカニズムの一端を、マウスにおいて発見したと発表した。
画像はプレスリリースより
この研究は、東京大学大学院医学系研究科の高柳広教授と古賀貴子特任助教らの研究グループによるもので、JSTの戦略的創造研究推進事業「高柳オステオネットワークプロジェクト」の一環として行われた。研究成果は、国際科学誌「Nature Communications」オンライン版に3月31日付けで掲載されている。
関節リウマチは関節部位に炎症が起こり、骨が壊れる疾患だが、関節部位の骨の破壊だけでなく全身の骨量が低下する骨粗しょう症も伴う。また、全身性エリテマトーデスなどの自己免疫疾患や、慢性炎症性腸疾患などの炎症性疾患、多発性骨髄腫においても、骨粗しょう症を伴うことが知られている。しかし、このような炎症に伴う骨破壊や、骨粗しょう症のメカニズムは十分に解明されていないため、これを未然に防ぐことは困難とされてきた。
炎症により免疫複合体が増加、Fcγ受容体の発現バランスも変化
研究グループは、多くの自己免疫疾患や炎症性疾患などに共通して増加する抗原・抗体複合体(免疫複合体)が、骨を壊す細胞である破骨細胞に直接的に働きかけて骨を減少させることを見いだした。自己免疫疾患を自然に発症するマウスの解析や、免疫複合体を局所的または全身に投与したマウスの骨の解析、および関節リウマチの症状を再現した遺伝子改変マウスを用いた遺伝子発現解析などを実施。さらに、人工的にIgG免疫複合体を作製し、マウスの頭蓋冠へ局所的に投与すると顕著な骨の破壊が起こったという。
これらの手法により、免疫複合体が増加し、それを認識する受容体たんぱく質(Fcγ受容体)の発現バランスが変化していることが判明。このことから、間接リウマチにおける局所的な骨の破壊だけでなく、全身性の骨粗しょう症の一因となることが明らかになったという。
同研究グループは今後、免疫複合体が、さまざまな自己免疫疾患や炎症性疾患に伴う骨の破壊と、骨粗しょう症を早期発見する有効なバイオマーカーになることが期待されるとしている。
▼外部リンク
・科学技術振興機構/東京大学 共同発表