HSCIよりヒト膵臓β細胞を作成する技術を導入
英国のアストラゼネカ社は3月25日、ハーバード幹細胞研究所(Harvard Stem Cell Institute: HSCI)と5年間の共同研究に関する契約を締結したことを発表した。この共同研究においてアストラゼネカ社は、糖尿病の新規治療薬の探索において、同社の化合物ライブラリを用いた候補化合物の選定のため、HSCIより、幹細胞からヒト膵臓β細胞を作成する技術を導入するという。
現在、糖尿病研究用のヒトβ細胞は、数量が限られており、入手が極めて困難な状況だ。しかし、HSCI共同代表およびハワード・ヒューズ医学研究所の研究者であるDoug Melton教授が率いるチームは、成人細胞から直接生成されたヒト人工多能性幹細胞を用いて、健常者成人β細胞とすべての重要な点で類似した細胞を作成する技術を開発。β細胞を際限なく作成することを可能にしたという。
糖尿病のメカニズム究明と新薬開発を目的とした共同研究を実施
アストラゼネカ社は、Melton教授が率いるHSCIの研究者チームに対し資金を提供するとともに、スウェーデンのムンダールに共同研究専任の社内チームを発足する。各組織の研究者たちは、ヒト人工多能性幹細胞から作成されたβ細胞を用いて、糖尿病におけるヒトβ細胞の機能低下や細胞数減少の背景にある生物学的メカニズムを究明。また、化合物のスクリーニングを行うことによって糖尿病患者のβ細胞機能を取り戻す可能性のある新しい薬の開発を目的とした共同研究を実施するという。
同社とHSCIは、このヒトβ細胞を作成する技術を利用することで、糖尿病患者のインスリン注射の必要性を改善し、多くの致死的な糖尿病合併症を予防する新薬の開発を進展させたいとしている。なお、この研究結果は、査読のある学術誌への掲載を通じて科学界全体に公開される予定。
▼外部リンク
・アストラゼネカ株式会社 プレスリリース