■武蔵野大学薬学部・大室教授ら
武蔵野大学薬学部医薬品情報学教授の大室弘美氏らの研究グループは、一般用漢方処方製剤を需要者が購入する前に注意すべき情報などを簡潔にまとめた「セルフチェックカード」を作成した。薬局の一般用医薬品陳列棚に配置して手にとってもらい、薬剤師への相談を促すツールとして活用する。オーストラリアで使用されている「シェルフトーカー」の日本版として作成した。きょう1日からイオングループの1店舗で試行を開始する計画だ。
2枚の名刺を縦に連ねた大きさの用紙に、添付文書から抜粋した情報を整理し、平易な言葉に置き換えて記載。それを二つ折りにし陳列棚に配置する。
例えば「小青竜湯」の場合、表紙には「かぜ」との表記のほか、その処方名、対象症状を掲載している。二つ折りを開いた両面には、体調が悪くなったりアレルギー症状を起こしたことのある方は「服用できません」と注意を喚起。また、▽医師の治療を受けている方▽汗っかきな方▽むくみのある方、おしっこが出づらい方――など「以下の項目に一つでも当てはまる場合は薬剤師にご相談ください」と記載している。裏面では「こちらがよく効く場合もあります」とし、葛根湯や麻黄湯など他の処方を紹介している。
このほど神戸市で開かれた日本薬学会年会で取り組みを公表した大室氏は、セルフチェックカードによって「需要者が薬剤師に相談しやすい環境を確保できる」と強調した。
「一般用漢方処方製剤は、薬剤師などによる積極的な情報提供は不要とされている第2類薬であり、添付文書は需要者が自ら判断できるように作成されてはいるが、情報は不足している。漢方は体質や症状に合わせて使用する必要がある。できるだけ薬剤師が情報提供や相談応需をする必要がある」と述べ、「自己判断のみで購入しないようにする。それによって相互作用の防止、受診勧奨、副作用の早期発見につながる」と語った。
大室氏らが手本にしたのはオーストラリアの「シェルフトーカー」。オーストラリア薬剤師会が中心になって作成した一般用医薬品のカウンセリングガイドブックに対応したもので、名刺2枚程度の用紙に必要最低限のセルフチェック項目を記載。陳列棚に配置し、薬剤師への相談を促すツールとして現在、約50種類が作成されている。
「シェルフトーカー」を参考に大室氏らは、第2類の一般用漢方処方製剤のうち売上の大きい処方に着目。かぜ(小青竜湯など4処方)、咳・のど(麦門冬湯など3処方)、尿の悩み(八味地黄丸など3処方)、婦人の悩み(加味逍遙散など3処方)、肩こり・関節痛・神経痛(独活葛根湯など5処方)の5領域18処方を対象にセルフチェックカードを作成した。
このほか、相談を受けた薬剤師がスムーズに対応できるように、添付文書から重要なポイントを抜き出したり、かぜの場合にどの処方を選択すればいいのかを証や症状から判断するフローチャートを作成したりして、薬剤師向け資料の作成も進めている。
共同研究者の1人が所属するイオングループの埼玉県にある1店舗で、きょう1日からセルフチェックカードの配置を開始する。数カ月間試行し、改善を加えながら配置店舗をもう一つ増やす計画だ。ほかにも協力店を募っており、「セルフチェックカードの使用を希望する薬局などには対応する」(大室氏)としている。