動脈硬化の要因「血圧変動性」に対する改善効果を確認
横浜市立大学は3月25日、同大医学部循環器・腎臓内科学の小豆島健護医師、大澤正人助教、涌井広道助教、田村功一准教授ら研究グループが、肥満症に処方されることが多い漢方薬「防風通聖散」が抗肥満効果や糖代謝改善効果を発揮することに加えて、動脈硬化の要因として注目される、血圧変動性に対する改善効果を発揮することを明らかにしたと発表した。この研究成果は、欧州動脈硬化学会(EAS)機関誌「Atherosclerosis」に掲載されている。
画像はプレスリリースより
防風通聖散は肥満症に対して処方されることのある漢方薬だが、そのメカニズムや肥満に合併することの多い高血圧や糖尿病への効果については、未だ不明な部分が多い。研究グループは今までに、内蔵脂肪型肥満を呈する生活習慣病モデルマウス(KKAyマウス)に今回と同じ防風通聖散を投与することで、防風通聖散の脂肪細胞・組織や基礎代謝などへの多面的な作用、さらには、食欲増進ホルモン「グレリン」を抑制することによる食事量の減少作用が生活習慣病の改善に関与する可能性を明らかにしていた。
HbA1c値の改善効果も認められる
今回の研究では、動脈硬化合併症の根源となる肥満高血圧の患者の同意のもと、対照治療群(52名、西洋医療単独コントロール治療群)と漢方薬併用群(54名、東洋医療と西洋医療の併用による防風通聖散治療群)とに無作為に割り付け、24週間にわたってプロトコル治療を行い、並行群間比較解析を実施した。
その結果、コントロール治療群と比較して、防風通聖散治療群では12週後、24週後における体重の減少効果、肥満度の改善効果を確認。また、糖代謝指標についてはコントロール治療群に比較して、防風通聖散治療群では12週後におけるHbA1c値の改善効果が認められたという。
さらに、主要評価項目であるABPM検査での血圧変動関連指標については、コントロール治療群に比較して、防風通聖散治療群において24週後における血圧変動性の改善効果が認められた。重回帰分析で解析したところ、防風通聖散による治療が血圧変動性の改善に関与していたという。
今後、統合医療(東洋医療と西洋医療の併用療法)が、心血管系疾患の高リスク高血圧とされる内蔵脂肪型肥満を呈する肥満高血圧を、より効率的に治療できる可能性を示唆した画期的な成果であると、研究グループは述べている。
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・横浜市立大学 プレスリリース