抗てんかん作用を持つケトン食療法の仕組みを解明
岡山大学は3月17日、既存の治療薬が効かないてんかん患者に効くケトン食療法の仕組みを解明したと発表した。この研究は、同大大学院医歯薬学総合研究科(薬)の井上剛准教授、佐田渚大学院生ら研究グループによるもの。研究成果は、米国科学振興協会(AAAS)発行の「Science」に3月20日付けで掲載された。
てんかん患者の約3割は、既存の治療薬でコントロールできていない。しかしながら、この治療薬が効かない難治性てんかん患者の一部には、ケトン食療法が効果的と言われている。ケトン食療法は、1920年代に開発された治療法だが、既存の治療薬にはない効用があると想定されていた。
強力な抗てんかん作用を示す乳酸脱水素酵素阻害剤も発見
研究グループは、ケトン食が引き起こす代謝変化が、どのように脳の電気活動を変化させるのかを調べた。その結果、脳内のグリア細胞から神経細胞へ乳酸を運ぶ代謝経路が、電気活動に重要であることを発見。この乳酸経路上に位置する乳酸脱水素酵素を阻害することで、電気活動が抑制され、てんかんマウスの発作を抑えられることを確認したという。
次に、乳酸脱水素酵素を阻害する化合物を探索。小児の難治性てんかんの治療薬として2012年に国内で承認された「スチリペントール」が、乳酸脱水素酵素の阻害剤であることを発見。さらに、スチリペントールの化学構造を変化させることで、より強力な抗てんかん作用を示す乳酸脱水素酵素阻害剤も見出すことにも成功したという。
これらの結果は、乳酸脱水素酵素を標的とし、スチリペントールの化学構造を変化させることで、ケトン食療法に基づくてんかん治療薬が開発可能であることを示唆している。今後、代謝酵素を標的とする新しいコンセプトのてんかん治療薬の開発に期待が寄せられる。
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・岡山大学 プレスリリース